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一級建築士の受験資格を徹底解説|学歴・実務経験・改正点まで全パターン網羅

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公開日時 2025.12.12 最終更新日時 2025.12.12

一級建築士は、建築物の設計・工事監理ができる最高峰の国家資格です。

令和2年の建築士法改正により、受験資格や実務経験の扱いが大きく変わりました。

従来は「実務経験を積んでから受験」という流れでしたが、現在は「受験してから登録時に実務経験を証明できる」制度に変更されています。

大学卒業後すぐに受験することも可能になり、早期のキャリア形成が実現しやすくなりました。

目次

一級建築士を目指すならまず「受験資格」を確認しよう

令和2年の建築士法改正により、実務経験は受験要件から外れ、免許登録要件へと変更されました。

現在では、指定科目を修めて大学を卒業すれば、卒業後すぐに一級建築士試験を受験可能です。また、二級建築士として免許登録をしている場合や建築設備士の有資格者であれば、追加の実務経験なしで一級建築士試験の受験に臨めます。

ただし、試験に合格しても、免許登録するためには所定の実務経験年数を満たす必要がある点に注意が必要です。

試験合格後も実務経験を積み続けることで、晴れて一級建築士として登録できます。

まずは自分の学歴や保有資格を確認し、受験資格を満たしているかをチェックしましょう。

一級建築士の最新受験資格一覧


一級建築士試験の受験資格は、大きく3つに分類されます。

  • 指定学科を卒業した人
  • 二級建築士・建築設備士の資格を持っている人
  • 国土交通大臣が認めた同等資格を持つ人

以下では、各パターンについて詳しく解説していきます。

指定学科を卒業した人

学校などで国土交通大臣が指定する建築に関する科目(指定科目)を修めて卒業した場合、一級建築士試験の受験資格が得られます。指定科目は、以下の9科目です。

  • 建築設計製図
  • 建築計画
  • 構造力学
  • 建築一般構造
  • 建築環境工学
  • 建築設備
  • 建築材料
  • 建築生産
  • 建築法規

合計で40単位以上を取得すれば、一級建築士試験の受験資格を獲得可能です。

なお、取得単位数 の区分によって、免許登録時に必要な実務経験年数が異なります。4年制大学で60単位以上を取得した場合は卒業後2年、50単位以上60単位未満の場合は3年、40単位以上50単位未満の場合は、4年の実務経験が免許登録時に必要です。

二級建築士・建築設備士の資格を持っている人

二級建築士または建築設備士の資格を取得している場合、学歴に関係なく一級建築士試験の受験資格が得られます。

二級建築士または建築設備士が建築士免許登録を完了するには、それぞれ以下の条件で実務経験が必要です。

  • 二級建築士:二級建築士として登録日から4年以上の実務経験
  • 建築設備士:建築設備士として合格日から4年以上の実務経験

なお、実務経験は試験の前後を問わず通算できます。

二級建築士取得後すぐに一級建築士試験を受験し、合格後に実務経験を積む流れも可能です。

国土交通大臣が認めた同等資格を持つ人

上記の学歴や資格に該当しない場合でも、国土交通大臣が同等以上の知識および技能を有すると認めた場合、一級建築士試験の受験資格が得られます。

外国の大学などで建築に関する課程を修了した場合、該当する可能性があります。

個別審査となるため、該当者は公益財団法人建築技術教育普及センターに直接問い合わせが必要です。

なお、この要件は限定的であり、一般的な受験ルートではありません。

一級建築士試験の内容と難易度を知っておこう

一級建築士試験は、学科試験と設計製図試験の2段階で構成されています。

学科試験に合格した者のみが設計製図試験を受験でき、両方で一級建築士試験の合格となります。試験は年1回実施され、学科試験は例年7月下旬、設計製図試験は10月中旬です。

令和7年の学科試験は7月27日に実施 され、合格率は16.5% でした。

※参照:令和7年一級建築士試験「学科の試験」の合格者を決定~4,529 人の合格者、16.5%の合格率~

一級建築士試験の内容と難易度の実態

以下では、学科試験と設計製図試験の具体的な内容と難易度について解説します。

  • 学科試験の構成と出題傾向
  • 設計製図試験とは?課題内容と評価ポイント
  • 合格率と学習時間の目安

それぞれの試験特性を理解し、効率的な学習計画を立てましょう。

学科試験の構成と出題傾向

学科試験は以下の5科目、計125問で構成されています。

科目設問数
学科Ⅰ「計画」20問
学科Ⅱ「環境・設備」20問
学科Ⅲ「法規」30問
学科Ⅳ「構造」30問
学科Ⅴ「施工」25問

出題形式は四肢択一式のマークシート方式で、各問1点の計125点満点です。

試験時間は計画・環境設備が各2時間、法規が1時間45分、構造・施工が合わせて2時間45分です。法規のみ、法令集の持ち込みが認められています。

近年の出題傾向として、実務に携わるうえでの啓発的な内容や、社会的重要性の高い分野、脱炭素社会の実現や建築物の長寿命化などのテーマが頻出しています。

設計製図試験とは?課題内容と評価ポイント

設計製図試験は、学科試験合格者を対象に実施される実技試験です。

試験課題は例年7月下旬に公表され、令和7年の課題は「庁舎」でした。要求図書として、以下の作成が求められます。

  • 1階平面図・配置図
  • 各階平面図
  • 断面図
  • 面積表
  • 計画の要点

試験時間は6時間30分でプランニングや作図、記述問題の解答をすべて完了させる必要があります。

とくに「設計条件・要求図書に対する重大な不適合」と判断されると、不合格となるため、課題文を正確に読み取ることが最重要です。

合格率と学習時間の目安

令和7年の学科試験の合格率は16.5%、受験者数27,489人に対して合格者は4,529人でした。
設計製図試験の合格率は年度によって変動しますが、令和6年は26.6% でした。
学科試験と設計製図試験を合わせた総合的な合格率は約9%前後 と、難関な試験といえます。
学 科試験の学習時間の目安は、初学者で1,000〜1,500時間、実務経験者や基礎知識を備えた方で700〜1,000時間とされています。
1年間で試験に臨む場合、毎日3時間程度の学習が必要です。
設計製図試験についても、学科試験合格後から本試験までの約3ヶ月間で、300時間程度の学習が推奨されています。

一級建築士の合格後に必要な「登録資格(実務経験)」とは

一級建築士試験に合格しても、すぐに一級建築士を名乗ることはできません。免許登録をするためには、建築士法で定められた実務経験を満たす必要があります。

  • 登録に必要な実務年数一覧 実務経験としてカウントされる業務
  • 実務経験の証明方法と注意点

実務経験は試験の前後を問わず通算できるため、計画的に積むことで効率的に免許登録まで到達できます。

登録に必要な実務年数一覧

一級建築士の免許登録に必要な実務経験年数は、建築に関する最終学歴または保有資格によって異なります。

  • 4年制大学卒業者は卒業後2年以上
  • 3年制短期大学卒業者は卒業後3年以上
  • 2年制短期大学または高等専門学校卒業者は卒業後4年以上の実務経験

二級建築士として免許登録している場合は、登録日から4年以上の実務経験が必要です。建築設備士の場合も同様に、建築設備士試験の合格日(または講習修了日)から4年以上の実務経験が求められます。

なお、指定科目の取得単位数によっても必要な実務経験年数が変わる点に注意が必要です。実務経験は試験の前後を問わず通算できます。

実務経験としてカウントされる業務

実務経験として認められる業務は、建築士法施行規則で詳細に定められています。主な対象業務は、以下のとおりです。

  • 建築物の設計に関する実務
  • 建築物の工事監理に関する実務
  • 建築工事の指導監督に関する実務
  • 建築士事務所の業務として行う建築物に関する調査または評価に関する実務
  • 工事の施工管理に関する実務
  • 建築基準法第18条の3第1項に規定する確認審査などに関する実務

令和2年の法改正により、実務経験の対象範囲が大幅に拡大されました。

実務経験の証明方法と注意点

実務経験を証明するためには、実務経歴書と実務経歴証明書を作成し、免許登録申請時に提出する必要があります。

実務経歴書には、在職期間や勤務先などを詳細に記載します。実務経歴証明書は、実務を行った会社の代表者や建築士事務所の開設者などに証明してもらいましょう。

証明者は、申請者が実務を行った当時の状況を知る立場にある者でなければなりません。令和2年以降の実務経験については、実務経験の対象となる業務の内容を例示コード表に基づいて記載する必要があり、より詳細な申告が求められています。

虚偽の証明をした場合は罰則が科されるため、正確に記載することが重要です。

一級建築士を目指すルート別モデルケース

一級建築士を目指すルートは、学歴や現在の状況によって複数のパターンがあります。

  • 大学
  • 高専卒ルート
  • 高卒・文系卒ルート(二級建築士取得)
  • 社会人学び直しルート

以下では、それぞれのルートについて具体的なモデルケースを紹介します。

大学・高専卒ルート

4年制大学の建築学科で指定科目60単位以上を修得後、卒業して一級建築士を取得するルートです。

具体的なスケジュールとしては、大学4年生の在学中から試験対策を開始し、卒業年の7月に一級建築士学科試験を受験します。学科試験に合格した場合、同年10月の設計製図試験を受験し、12月に合格発表があります。

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試験合格後は設計事務所やゼネコンなどに就職し、2年間の実務経験を積むことが必須です。実務経験の内容としては、建築物の設計業務や施工管理業務などが該当します。2年間の実務経験を満たしたあと、実務経歴書と実務経歴証明書を作成し、一級建築士の免許登録申請を行います。

このルートでは、最短で24歳で一級建築士として登録することが可能です。

高卒・文系卒ルート(二級建築士取得)

高校の建築科または土木科を卒業した場合、卒業後3年以上の実務経験を積むことで二級建築士試験の受験資格が得られます。普通科高校卒業の場合は、7年以上の実務経験が必要 です。二級建築士試験に合格し免許登録したあとは、一級建築士試験を受験できます。

具体的なスケジュールとしては、高校卒業後すぐに建設会社や設計事務所に就職し、実務経験を積みながら二級建築士試験の勉強を進めましょう。

二級建築士として登録したあとも継続して実務に従事し、一級建築士試験を受験・合格したうえで4年間の実務経験を満たすと 、一級建築士として登録が可能です。

社会人学び直しルート

建築学科以外の大学を卒業した社会人や、建築業界未経験の社会人が一級建築士を目指す場合、通信制大学や夜間の専門学校で指定科目を修得するルートがあります。

近年は、働きながら学べる通信制大学が充実しており、建築士の受験資格に対応したカリキュラムが提供されています。

通信制大学に編入学し、2〜4年間で指定科目を修得するのが具体的なスケジュールです。在学中または卒業後に建築関連の仕事に転職し、実務経験を積み始めます。指定科目を修得して卒業すれば一級建築士試験の受験資格が得られ、学科試験と設計製図試験に挑戦します。

試験合格後には、所定の実務経験年数を満たした段階で免許登録申請を行いましょう。

なお、社会人の学び直しには、専門実践教育訓練給付金制度を活用できる場合があります。

一級建築士における制度改正前と後の違い

令和2年3月1日に建築士法の一部を改正する法律が施行され、建築士試験制度が大きく変わりました。

  • なぜ制度が変わったのか?法改正の背景
  • 改正前:実務経験が必須だった
  • 改正後:学歴や資格を満たせば受験できる
  • 今後さらに変わる可能性はある?

以下では、改正の背景と具体的な変更内容について解説します。

なぜ制度が変わったのか?法改正の背景

建築士法改正の最大の背景は、建築士人材の高齢化と受験者数の減少です。令和2年以前の統計では、一級建築士の約40%が60歳以上 であり、20代の建築士はわずか1%程度 という超高齢化が進んでいました。また、受験者数も年々減少傾向にあり、受験者の平均年齢も上昇しています。

この状況を踏まえ、建築士人材を継続的かつ安定的に確保する目的から、建築士試験の受験機会を拡大する制度改正が進められています。

改正前:実務経験が必須だった

令和元年以前の建築士法では、4年制大学の建築学科を卒業した場合でも、卒業後2年以上の実務経験を積まなければ受験できませんでした。

二級建築士を経由して一級建築士を目指す場合も、二級建築士として4年以上の実務経験が必須とされていました。

さらに短期大学や高等専門学校の卒業者も同様に、長い実務経験年数を積むことが求められていたのです。

この制度では、大学卒業後最短で24歳まで一級建築士試験を受験できず、若年層のキャリア形成に時間のかかる点が課題点でした。

改正後:学歴や資格を満たせば受験できる

令和2年以降の建築士法では、実務経験が受験資格から免許登録要件に変更されました。これにより、大学で指定科目を修めて卒業すれば、卒業後すぐに一級建築士試験を受験できるようになったのです。

現在では、二級建築士や建築設備士の資格を取得していれば、実務経験なしで一級建築士試験を受験可能です。

実務経験は試験の前後を問わず通算できるため、柔軟なキャリア形成が可能になりました。また、学科試験合格の有効期限が3年から5年に延長されたことで、設計製図試験に多くの時間をかけることも可能です。

今後さらに変わる可能性はある?

建築士制度は、社会情勢や建築技術の進展に応じて今後も見直される可能性があります。とくに、デジタル技術の進展やBIMの普及に伴い、建築士に求められる知識やスキルも変化しています。

令和7年には建築士法第3条の改正 が行われ、一級建築士でなければ設計・工事監理できない建築物の範囲が見直されました。

今後も、試験内容や実務経験の対象範囲が拡大・変更される可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。

一級建築士の受験資格についてよくある疑問

一級建築士の受験資格について、多く寄せられる質問をまとめました。

  • 一級建築士は受験資格なしでも受けられる?
  • 高卒から一級建築士になるための現実的ルートはある?
  • 一級建築士になるためにはどこで学べばよい?
  • 登録資格・実務経験はどこまでカウントされる?

以下では、それぞれの疑問について詳しく回答します。

一級建築士は受験資格なしでも受けられる?

一級建築士試験を受験資格なしで受けることはできません。必ず建築士法で定められた受験資格を満たす必要があります。具体的には、以下いずれかの要件を満たす必要があります。

  • 大学などで指定科目を修めて卒業する
  • 二級建築士または建築設備士の資格を取得する
  • 国土交通大臣が同等以上と認める

建築学科以外の学科を卒業した場合や、建築関連の資格を持っていない場合は、通信制大学や専門学校で指定科目を修得しましょう。

もしくは、二級建築士を取得してから一級建築士を目指すルートを選ぶことも可能です。

高卒から一級建築士になるための現実的ルートはある?

高卒から一級建築士を目指す現実的な選択肢は、二級建築士を経由するルートです。

建築科または土木科など建築に関する学科の高校を卒業した場合、指定科目を修得していれば卒業直後から二級建築士試験の受験資格が得られます。普通科高校卒業の場合は、7年以上の実務経験が必要です。

二級建築士として免許登録したあとは、一級建築士試験を受験できます。建築実務を4年以上積むことで、一級建築士の免許登録に必要な実務経験年数を満たすことが可能です。建築科高校卒の場合でも、二級建築士としての実務経験や一級建築士としての登録要件を満たすことが必要です。働きながら通信制大学や夜間の専門学校で指定科目を修得し、一級建築士の受験資格を得る方法もあります。

一級建築士になるためにはどこで学べばよい?

一級建築士の受験資格を得るためには、国土交通大臣が指定する建築に関する科目を修得できる教育機関で学ぶ必要があります。

社会人の場合は、通信制大学も選択肢の1つです。60単位以上取得できる教育機関であれば、卒業後2年の実務経験で免許登録できます。

学校選びの際は、指定科目の修得単位数を確認しましょう。二級建築士の合格実績や就職実績、資格取得サポート体制なども確認しておくと安心です。

登録資格・実務経験はどこまでカウントされる?

実務経験としてカウントされる業務は、建築士法施行規則で詳細に定められています。おもな対象業務は、以下のとおりです。

  • 建築物の設計
  • 工事監理
  • 施工管理
  • 確認審査
  • 建築行政
  • 建築教育
  • 建築研究開発

令和2年以降の実務経験については、基本計画策定業務、標準的な設計業務、解体工事にかかわる設計なども実務経験として認められるようになりました。

一方、単なる写図工や労務者としての経験、単なる庶務・会計業務は、実務経験に含まれません。

大学院でのインターンシップも、所定の単位数を取得すれば実務経験としてカウントできます。実務経験は、試験の前後を問わず通算可能です。

まとめ|あなたに合った一級建築士への最短ルートを選ぼう

一級建築士の受験資格は、令和2年の建築士法改正により大きく変わり、実務経験なしでも受験できるようになりました。大学で指定科目を修めて卒業すれば、卒業後すぐに受験可能です。二級建築士や建築設備士の資格を取得している場合も、実務経験なしで受験できます。

ただし、免許登録には所定の実務経験年数が必要であり、計画的に実務経験を積むことが重要です。

一級建築士を目指しながら、今より働きやすい環境も視野に入れたい方は、施工管理・建設技術者専門の転職サイト「施工管理求人サーチ」もチェックしてみてください。非公開求人や年収アップ事例なども掲載されているため、受験計画と合わせてキャリアプランを考える参考になります。自分の学歴や現在の状況に合わせて最適なルートを選び、効率的に一級建築士を目指しましょう。

また、1級建築士の求人を実際に見てみることもおすすめです。働いている人の実際の年収例や、待遇や勤務地、働き方などを実際に見てみることでイメージがわき、気になる求人があれば勉強のモチベーションにもなります。

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