建築士の主な仕事内容や将来性|働くのに必須な資格や能力などを紹介
目次
建築士とはどのような仕事なのか?
建築士の仕事内容は、住宅や公共建築物などの設計に携わることです。建物の建築には建築基準法が適用されるため、法に基づいた上で顧客の要望をなるべく叶えるように設計図を起こします。
地震の多い日本では非常に重要な耐震性をはじめとした、建物を利用する人の安全や快適性を考え、電気や水道・空調など各種設備の設計などを行います。
- 建築家との違い
- 設計士との違い
建築家との違い
建築士と建築家は、仕事内容自体は変わりません。建築家も建築士と同じように建物の設計に携わり、工事監理をする仕事です。
あえて違いに言及するとすれば、「建築士」という職業には堅いイメージがあるのに対して、「建築家」という場合には、芸術家に通じるイメージがあることが一般的な感覚でしょう。
上記に鑑みれば、建築デザインに個性を出す人や、その個性的なデザインが求められている人を指して「建築家」と呼ぶことが多いと言えます。
設計士との違い
建築士には法律に基づいた資格があります。しかし、建築業界において「設計士」と呼ばれる場合、基本的には建築士としての資格がなくても仕事内容として設計に携わる人のことを指しています。
したがって、何も資格がなくても設計士と名乗ることはできます。ただし、設計や工事監理には建築士としての資格が必要なことが多いため、設計士は基本的に建築士を補助する仕事内容でしょう。
建築士の主な仕事内容4つ
建築士の仕事は建物の設計を起こすことや建築の際に工事監理することだと前述しましたが、その仕事内容には大きく分けて4つの段階があります。
実際に建築士として建物の建築に携わった際に、どのような手順で仕事していくのかを4段階に分けて紹介いたします。大切なポイントと共に、以下で詳細を見ていきましょう。
- 顧客の依頼を受け意見を聞く
- 建築物の設計図の作成する
- 工事中の管理や施工工事をする
- 完成後の引き渡しをする
1:顧客の依頼を受け意見を聞く
建築士としての仕事は、顧客から依頼を受けることで始まります。「どんな建物を建てればよいのか」「どのようなデザインを希望しているのか」「予算額はどの程度か」といった、設計に必要な情報を顧客から聞く必要があります。
顧客に満足してもらうためにも、何を重要視しているのかを正確に把握しておくことが大切です。最初の段階で、建物の設計に必要な情報は全て、顧客から聞き出しておきましょう。
2:建築物の設計図の作成する
次に、実際に建築する建物の設計図を起こしていきます。建物を利用する人が安全かどうか、快適性はどうかといった観点と顧客の要望をなるべく叶えられる形でデザインを決め、設計していきます。
顧客の要望を叶えることは大切ですが、建築士として建築基準法を順守した建物になるように設計する必要があります。
3:工事中の管理や施工工事をする
作成した設計図と予算に問題がなければ、実際に建物の工事が始まります。建築士の仕事内容には、工事中の工事監理も含まれています。施工を請け負う現場監督や職人、施工管理技士らと工事の打ち合わせを行い、施工工事がスタートします。
この工事監理は、建築士として重要な仕事内容になります。建築士自身が作成した設計図通りに施工されているかどうか現場の確認を行い、もしされていなければ是正するといったように適切に対応することが求められています。
4:完成後の引き渡しをする
工事監理した建物の施工工事が終われば、顧客に対して完成した建物の引き渡しを行います。建築士の仕事内容として、本当に設計図通りの建物になっているかどうか、顧客に引き渡す前に竣工検査で確認する必要があるでしょう。
建築士として工事監理で確認しているでしょうが、ここでは最終的なチェックを行います。建築士がチェックした後、顧客の最終チェックに立ち会って、建物の引き渡しとなります。
建築士の高い将来性を示す現状4つ
建築士は将来性のある仕事で、今後もなくならない仕事と言われていますが、その理由は建築士の仕事内容が多岐にわたり、様々な能力を必要としているためでしょう。その分、責任が重い仕事内容であるとも言えます。
ここからは、建築士としての将来性を考えている方や、職業として選択するか迷っている方のために、建築士の将来性について見ていきましょう。
- 現存建物の老朽化・建て替えに伴う需要がある
- 建築士の高齢化と減少傾向による供給不足がある
- 様々な活躍の場所がある
- 多くの能力が必要になる
1:現存建物の老朽化・建て替えに伴う需要がある
日本では1960年代の高度成長期、そして1986年~1990年代あたりまでの不動産価格高騰によるバブル期に多数の建物が建てられました。それから何十年も経った現在では、建物の老朽化が進んでいるという状況にあります。
建設ラッシュが起こった後には、それらの建物の老朽化による建て替えが発生します。建物の建て替えには設計から工事監理まで携わる建築士が必須であるため、建築士の需要は高く、将来性があると言えるでしょう。
2:建築士の高齢化と減少傾向による供給不足がある
建築士の種類には一級建築士や二級建築士、木造建築士があり約120万人の人が国家資格を有しています。しかし、国土交通省の資料(平成29年6月30日時点)によると、50代以上の建築士が60%以上を占めているのが現状です。
その一方で、20代は1%、30代で11%、40代で24%という数字からも分かるように、需要に比べて建築士の数が減少傾向にあることも、将来性があることの根拠になるでしょう。
3:様々な活躍の場所がある
建築士の仕事内容は、建物の設計や工事監理であると紹介してきました。しかし、インフラの整備や古くなった建物の解体工事といった現場でも建築士には活躍の場があることから、将来性のある仕事と言えるでしょう。
また、建物を解体する際には安全に解体工事をする必要があるため、建物について熟知している建築士の存在が求められています。老朽化した建物が増えている現在では、建築士の将来性は明るいでしょう。
4:多くの能力が必要になる
建築士の仕事内容は建築基準法を守ることだけではありません。
例えば、高齢者が利用する施設のバリアフリーに関する知識や、省エネ化のためのエコに関する知識といった、様々な顧客の要望に応えるためにも、建築に関する多様な知識が必要になります。
そのため、多くの知識や技術を持ち、顧客の多様な要望にも対応可能な建築士は、将来性が明るいと言えるでしょう。
建築士とAIの仕事内容の関係性
建築士の仕事の中にもAIの得意分野があるため、いくつかAIにとって代わられる可能性は否めないでしょう。しかしながら、「建築デザイン」や「顧客の要望に沿った設計」といった、建築士にしかできない仕事があります。
つまり、AIが建築業界に導入されたとしても、将来性がないと言い切ることはできないでしょう。ここからは、建築士とAIの仕事内容の関係性について紹介します。
- 作業の効率化ができる
- 代替できる仕事がある
作業の効率化ができる
建築士の仕事にAIを活用することで、仕事内容の作業を効率化できます。
例えば、ドローンを使った建築現場の調査や図面の作成、予算の見積もりといったような建築士の仕事内容はAIの得意分野であるため、AIの活用で作業の効率化が見込まれます。
現在ではBIMソフトを導入し、作業効率化を図っている企業が増えていることから、むしろAIに対応できた方が仕事内容に幅ができて将来性があると言えるでしょう。
代替できる仕事がある
AIに代替させることで建築士としての仕事内容が楽になる、ということもあります。例えば、建物の設計に必要な計算や分析といった作業を、それらの作業が得意であるAIに任せるといった方法です。
設計に必要とはいえ面倒な計算はAIに代替できるため、建築士は現在よりももっとデザインに集中し、自由な発想の建物を作れるようになる可能性があります。
将来性を考えれば、AIの導入はマイナスになりにくいと言えるでしょう。
建築士として働くのに必須な資格3つ
建築士と名乗って働きたい場合には「一級建築士」・「二級建築士」・「木造建築士」といった資格が必要です。
また、建築士として働くのに必須ではありませんが、建築士のさらに上位の資格として「構造一級建築士」や「設備一級建築士」が創設されています。以下で詳しく見て行きましょう。
- 一級建築士
- 二級建築士
- 木造建築士
- 構造一級建築士
- 設備一級建築士
1:一級建築士
一級建築士は、建築士として必要な資格の中でも最難関の資格となっていますが、それだけに資格を取得しているとあらゆる種類の建物の設計に携われるという特徴があります。
一級建築士になるには、一級建築士試験に合格する必要があります。一級建築士試験は「学科」と「設計製図」の2つに分かれており、学科試験に合格することで設計製図試験に進めるようになります。
受験には大学および高等専門学校の指定科目の履修及び、二級建築士資格などが必要です。
出典:一級建築士試験|公益財団法人 建築技術教育普及センター
2:二級建築士
二級建築士試験は、一級建築士ほど難関ではありませんが、基本的に住宅規模の建築にしか携われないという制約があります。なんでも設計したいという場合は、一級建築士を目指した方がよいでしょう。
二級建築士も、「学科」試験に合格した上で「設計製図」試験に合格する必要があります。二級建築士試験の受験には大学および短期大学、高等専門学校などで指定科目を履修していること、建築実務経験7年以上などが必要となっています。
出典:二級建築士試験|公益財団法人 建築技術教育普及センター
3:木造建築士
木造建築士は、その名前の通り、木造の建物に関する設計が可能となる資格です。木造建築士試験自体の受験資格は二級建築士と同じですが、二級建築士が設計可能な建物よりもさらに、木造に限るという制約が入った資格となります。
主に木造住宅や規模の大きくない木造の事務所、店舗などが木造建築士が設計可能な範囲となってきます。制限が大きいため、多くの建築に携わりたい場合は一級建築士や二級建築士資格取得を目指した方がよいでしょう。
出典:木造建築士試験|公益財団法人 建築技術教育普及センター
4:構造一級建築士
構造一級建築士は、一級建築士よりもさらに上位の資格として創設された国家資格です。
4階建て以上の鉄骨造、高さ20mを超える鉄筋コンクリート造といった大規模な建物について、自身で設計できるほかに一級建築士の設計を計算・確認するといったことが仕事内容となります。
受験資格を得るためには一級建築士として5年以上の業務が必要で、業務内容としては構造設計や構造の工事監理、構造計算などに携わっている必要があります。
出典:構造設計一級建築士講習(制度全般)|公益財団法人 建築技術教育普及センター
5:設備一級建築士
設備一級建築士も一級建築士よりも上位の資格として創設された資格であり、設備設計の専門家と言える資格です。
規模の大きな建物(3階層以上かつ床面積5,000平方メートル以上)の設備設計を行うほか、他の一級建築士が作成した設計の確認が仕事です。
そのため、一級建築士として5年以上で設備設計に携わる業務経験が必要となり、さらに設備設計一級建築士講習を修了することで受験資格を得られます。
出典:設備設計一級建築士|公益財団法人 建築技術教育普及センター
建築士の将来性に求められる能力5つ
国家資格をとれば建築士になれますが、建築士として生き残り将来性のある建築士になるためにはそれだけでは十分ではありません。
建築士は、設計に関する知識を有していることはもちろん、自分の設計能力を売り込み、顧客や施工に関わる人たちとの関係を円満に築いていく必要があります。
- 顧客の要望に対する提案力
- 顧客の思いを聞き取る会話の能力
- 建築やITの最新技術を学び続ける向上心
- 仕事を勝ち取る営業力
- 良好な人脈を構築する力
1:顧客の要望に対する提案力
建築士に設計を依頼してくる顧客は、様々な要望を持っています。顧客の要望に応えることはもちろん、要望をしっかりと理解した上でさらに良い案を提供できる力が必要です。
求められたことだけをするのではなく、求められた以上の提案をすることで、顧客の満足度を上げられるでしょう。
2:顧客の思いを聞き取る会話の能力
顧客の要望を正しく理解し、さらに上を提案するために必要なのが、顧客が何を考えて要望しているのかを聞き取るためのコミュニケーション能力です。
建築士は、顧客相手だけでなく、施工工事を請け負う現場監督や職人のような人たちとも話し合う必要があります。設計図通りに工事が進んでいるかどうか工事監理をしっかりするためにも、円満に会話するためのコミュニケーション能力がなくては務まらないでしょう。
3:建築やITの最新技術を学び続ける向上心
建築業界では法律が変わったり、新しい建材や工法が登場したりするため、常に最新情報を集め続ける必要があります。
IT化も進んでいるため、これらの最新技術の知識を持っているかどうかで顧客の要望をどこまで実現できるか、効率よく工事を行えるかが変わってきます。情報収集や勉強を続けなければ、建築士として大成することは難しくなるでしょう。
4:仕事を勝ち取る営業力
建築士として仕事を得るには、プレゼンやコンペで勝つ必要があります。名前の売れた建築士ならば、顧客から直接オファーを受け取ることがありますが、そうでなければ自分から売り込みをかけていくような営業力が必要になってきます。
一級建築士として様々な建物の設計・建築に携わりたいのであれば、自分の設計を売り込む営業力は必須と言えます。
5:良好な人脈を構築する力
建築士として仕事を勝ち取るため、また、円満に建築士としての仕事をしていくためには良好な人脈を構築し、維持し続けていくことが必要です。
相手は人間なので、同じことを営業・提案するにしてもよく知っている人かそうでないかで対応が変わってくることは自然なことでしょう。仕事で関わった人とは良好な関係を構築して維持することで、その後の仕事も円満に進む可能性が高くなるでしょう。
建築士として活躍できる4つの職場
建築士は個人で仕事することの他に、企業で働くという選択肢があります。ここで紹介しているハウスメーカーや設計事務所以外にも、インテリアデザイン系の企業や家具メーカーにも活躍する場があるでしょう。
大切なことはどんな仕事をしたいのか考えて、適切な職場に就職することです。
- ハウスメーカー
- 設計事務所
- 工務店
- ゼネコン
1:ハウスメーカー
ハウスメーカーでは、基本的に戸建て住宅の設計や建築、販売といった仕事に携わることになります。
ハウスメーカーは全国的に注文住宅を大量に生産し、販売しています。ハウスメーカー独自に統一された設計や施工方法などがあり、それによって多数の住宅への対応を円滑に進めているため、主に住宅を設計したい場合の選択肢になるでしょう。
2:設計事務所
建築士として設計事務所に所属する方法と、自分自身で建築設計事務所を開いて個人で仕事する方法の2種類があります。設計事務所にもそれぞれ特色があり、得意分野とする建築や工法などが変わってくるため、確認してみることをおすすめします。
中には、個人の個性や芸術性に特化したアトリエ系建築設計事務所と呼ばれる事務所も存在するため、興味がある事務所をピックアップしておくのも良いでしょう。
3:工務店
一般的に工務店はその地域の建築に特化した職場であるため、ハウスメーカーや設計事務所のような独自色をあまり持たず、その時々で顧客の要望に応えて建築に携わっていくことになるでしょう。
特定の地域で建築士として働きたい場合や、企業色の薄い設計や建築をしたい場合の選択肢となるでしょう。
4:ゼネコン
設計や建築だけでなく、積極的に建築に関する研究をしたい場合にはゼネコン(ゼネラルコントラクター)が選択肢になるでしょう。ゼネコンのように、研究を自社で行っている企業は少ないためです。
また、ゼネコンではマンションやテーマパーク、オリンピック会場といった大きな規模の建築に携わることになります。これらの大型建築に関わりたい場合にもおすすめです。
建築士は派遣社員として働く手もある
建築士は資格が必要な仕事の1つであるため、派遣社員としての需要があります。結婚や出産・育児を機に派遣社員に切り替えて建築士として働く、といった働き方をしている人も多いでしょう。
建築会社を専門とした派遣会社があるため、そういったところで紹介してもらって派遣される形になります。
- 派遣社員の場合の待遇
- 実務経験が求められる
派遣社員の場合の待遇
派遣社員としての待遇は、保有している資格や経験の差などにより時給が決定します。おおよそですが、時給については約1,500円~3,000円以上と幅があります。
派遣期間には、数ヶ月単位の短期や、数年単位の長期があるでしょう。派遣社員であるため、退職金は支払われません。
実務経験が求められる
派遣社員の建築士として働く場合、すぐに仕事にとりかかる必要があるため実務経験があることは必須と言えるでしょう。過去にどのような設計・施工に携わっていたのか、実務経験と共にすぐにでも建築士として働ける環境にあることが求められています。
そのような背景から、最初から派遣社員として働くというより、元々は正社員で働いていたが事情があって派遣社員になったという方がほとんどでしょう。
建築士の将来性や仕事内容について理解しよう!
一級建築士や二級建築士、木造建築士といった国家資格が必要な建築士は、「建物の専門家」とも言える職業です。IT化によって将来的になくなるとされている職業が多い中、建築士はIT化を進めつつも残り続ける職業になるとも言われており、将来性はあると言えるでしょう。
本記事で建築士の仕事内容や職場の種類について知り、自分に合った職場に就職しましよう。
当サイトの記事は基本的には信頼性に足る情報源(公共機関や企業サイト、または専門家によるもの等)をもとに執筆しており、情報の正確性・信頼性・安全性の担保に努めていますが、記事によっては最新の情報でない場合や情報の出典元表記や正確性が充分でない場合があります。予めご了承ください。
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