現場代理人の仕事内容や将来性|必要な能力もあわせて紹介


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目次
現場代理人とは
現場代理人とは、工事現場において請負業者である経営者の代わりにその現場を統率し、工事などを円滑に進めるための管理監督を行う役目を担っています。
工事現場が複数に及ぶ場合には、経営者1人で管理することが難しいため、現場代理人を設置することで経営者自身の業務負担を軽減することが可能です。
現場代理人の主たる業務内容は「工事費などの原価管理」や「工事現場の安全管理」、「施工内容の品質管理」、「納期内に工事を完了する工程管理」、「周辺住民などから寄せられる苦情への対応」などがあり、工事現場における最高責任者として業務を遂行します。
ここからは、現場代理人の仕事内容や将来性、求められるスキルなどについて解説していきます。
現場代理人になるための資格とは
現場代理人になるための保有資格や実務経験といった要件は特段、設けられていません。建設関係や土木関係に関する知識・経験がない人であっても、法律上においては現場代理人になることが可能です。
しかしながら、現場代理人が主任技術者や監理技術者などを兼務する場合には、それぞれに資格要件を具備しておかなければなりません。
出典:建設業法第十九条の二|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100_20201001_501AC0000000030&keyword=%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E6%A5%AD
現場代理人と現場監督との相違点
現場代理人と類似したものとして「現場監督」があります。現場監督は法律上規定された用語ではなく、工事現場などにおいて施工管理を担う立場の者を指す一般的な用語です。
複数の現場監督が常駐する規模の大きい工事現場などでは、現場監督の上位である現場所長といった役職が存在し、その者が現場代理人を務めるケースが一般的となっています。
現場代理人の6つの仕事内容
ここからは、現場代理人の主な仕事内容を6つ紹介していきます。工事現場の責任者として直接的な作業を行うことは少なく、管理業務がメインとなります。
管理業務としては「原価」、「安全」、「品質」、「工程」管理といった四大管理のほかにも現場の指揮や指示などを行う統括業務が主な仕事内容です。
1:工事費の原価管理を行う
工事費などの原価管理を行うのも現場代理人の仕事の1つです。「原価管理」における仕事内容としては、限られた予算の中で建設物を完成させ、最終的にはその会社が適正な利益を得ることを目的として管理を行います。
作業に求められる品質を確保しながら、自社への利益確保を図るため、人員の配置や材料の仕入れといった知識が要求されます。
施工案件を受注した会社にとって利益に直結する仕事内容となるため、重要な業務の1つです。また昨今では専用ソフトを導入している企業も多く、原価管理はデジタル化が進んでいる傾向にあります。
2:現場の安全管理を行う
現場の安全管理を行うことも現場代理人の仕事の1つです。工事現場内に潜在する危険要素を排除し、安全に作業ができる環境の整備を行います。工事現場における労災事故は、他業界と比較しても圧倒的に多発しているため、現場での安全性確保の取り組みは必要不可欠です。
現場事故は作業員だけでなく、発注者にとっても重大な問題であり、発生することがないように未然に防ぐようにしなければなりません。
3:施工内容の品質管理を行う
施工内容の「品質管理」としての仕事内容は、設計図書や発注書通りに施工ができているかなどを確認する業務です。また仕上がりなどに問題や欠陥がないことなども確認・点検します。
発注者から指定を受けている材料や設備が正確に設置されているか、傷や汚れ、隙間などが生じていないかなど、作業の進捗に応じて適宜確認を行い、次の工程へと進んでいきます。
仕上がりの品質も重要なポイントの1つですが、基礎や柱・梁などといった構造部分の品質管理は最重要ポイントとなります。
これは建物の耐久性に直結する要素であり、なおかつ完成後には容易に確認することができないことから、問題点があってもすぐに改善することが難しくなります。
また我が国は地震大国でもあることから、耐震性に関する品質は発注者自身も重きを置いています。完成した品質は発注者の満足度にも影響を及ぼすため、作業者は責任を持って施工に取り組み、品質管理を徹底するといったプロセスは必要不可欠とされています。
4:納期内に工事を完了する工程管理を行う
現場代理人は、工期内に工事が完了するように作業工程の管理を行うことも大切な仕事の1つです。工事現場には多くの業者や作業員が携わっているため、これらすべての人員が工程表をもとに担当している工事を遂行していきます。
工程が1つでも遅れてしまうと、その後の工程にも影響を及ぼしてしまうため、その都度調整や見直しを行わなければなりません。
作業が円滑に進まない場合は工期の遅れを招くだけにとどまらず、余計なコストが発生したり品質の低下を招いたりなど悪循環に陥ってしまうため注意が必要です。
各作業員が工程を遵守し、工期までに完成するための環境づくりが現場代理人に求められます。
5:工事施工の一切の責任を負う
現場代理人は工事現場の代表として一切の責任を負うことになります。作業関係者のみならず、対外的交渉や周辺住民との折衝にも対応します。
直接的な作業は行わなくても、施工責任を有する立場であるため、関連書類などには現場代理人として署名・捺印する場面もあります。また適切な管理が行われていない場合には、発注者から注意されるケースもあるため注意が必要です。
6:作業員を統率し指示を出す
現場代理人は経営者(請負会社)の代理として作業員に適切な指示を出したり、協力会社と連携を取ったりなど工事現場の統率をする立場にあります。そのため工事を円滑に進めるにあたって現場を俯瞰的に管理監督し、指示や指導をすることが現場代理人の仕事です。
また一方的に指示するのではなく、現場作業員の意見に耳を傾ける姿勢も必要となります。コミュニケーションを積極的にとることによって、現場を円滑に進めていかなくてはなりません。そのため直接的な作業を行うことはなくても、工事に関する幅広い知識や経験が求められます。
現場代理人を置く義務4つ
建設業法では現場代理人の配置を義務付けてはいませんが、発注者との契約に基づいて選任・配置がなされるようになっています。
法律上においては、配置義務とはなっていないものの配置することが望ましく、優秀な現場代理人が指揮・指示を行うことで工事が円滑に進みやすくなります。
ここからは、現場代理人を配置することで課される義務について紹介していきます。
1:通知を発注者に行なう
現場代理人に選任された者は、経営者に代わって代理行為をするため、具体的に「誰が」「何を」代理し、どのような範囲まで代理権限があるのかを明確にしなければなりません。
加えて現場代理人を選任した際には、発注者に「代理権の授与権通知書」をもって通知をする必要があります。
出典:建設業法第十九条の二|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100_20201001_501AC0000000030&keyword=%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E6%A5%AD
2:兼務は契約内容で替わる
法律上、現場代理人の兼務に関する規定は明記されていないため、同じ現場で主任技術者などを兼務することが可能です。
一般的に工事規模が小さく現場を統括するには1人で足り得る場合に兼務が採用されますが、現場代理人の常駐義務の緩和によって、3つの要件を充足した場合は主任技術者および監理技術者との兼務も可能になっています。
3つの要件としては「兼務する工事の件数が少数であること」、「兼任する工事の現場間距離(移動距離)が一定範囲内であること」、「発注者または監督員が求めた場合には、工事現場に速やかに向かう等の対応を行うこと」となっています。
3:施工期間内の変更はできない
工事施工期間内においては、原則として現場代理人を変更することはできません。現場代理人が変わることで、工事全体の工程や安全管理が担保できなくなったり、内容を引き継ぐための時間を要したりなどのデメリットが生じるからです。
工事が着工されれば、1人の現場代理人が工事完了までその現場に責任を持って携わることになります。これによって、引き継ぐべき情報の抜け漏れや工期の遅れが生じることを防ぐことができます。
4:施工期間内は常にいる必要がある
現場代理人は、施工期間内は常に現場にいる(常駐している)必要があります。このため作業期間中は特別の理由がある場合を除いて、常に工事現場に滞在していなければなりません。これは発注者との連絡や協議に支障を及ぼさない状態であることが目安となります。
また公共工事の場合は工事標準請負契約約款によって、現場代理人の配置は義務となっているため注意が必要です。
現場代理人に必要な4つの能力
ここからは、現場代理人に求められる能力について解説していきます。工事現場の統率を担う立場であるため、幅広い知識やスキルが要求されます。
現場代理人として必要な能力としては「統率力」や「段取り力」、「先読み能力」、「責任感」、「経理能力」、「交渉力」、「向上心」と言われています。これから紹介する4つの能力と結び付けて確認していくようにしましょう。
1:職人やスタッフとのコミュニケーション能力
工事現場では施工を請け負った会社だけがいるのではなく、さまざまな工事関係者や職人・スタッフがいます。そのためこれら多くの人員と常に連携を取り合う「コミュニケーション能力」が必要不可欠です。

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たとえば当日の仕事内容の確認や資材搬入時間の設定など、決められた工期の中で現場全体を動かし確認するためには、コミュニケーション能力や統率力・交渉力が必要となります。
2:トラブル発生時は的確に指示を出す決断力
工事現場を統率する現場監督といった役割において、判断に自信が持てず決断力に乏しい場合は周囲からの信頼を得ることはできず、工事現場全体の士気が下がってしまいます。
また相手の意見に耳を傾けることは大切なことの1つですが、自分の決断が二転三転してしまうのも責任者としては失格です。
とりわけトラブルなどが発生した場合などでは、迅速かつ的確な対応が求められるため、自分の判断に責任を持ち迅速な指示を出すことができる決断力が必要不可欠です。
3:現場の現状理解や道具と機械の知識や経験
現場代理人は現場の管理監督を行うため、工事現場そのものの現状理解が必要不可欠です。また建設業界は常に新しい技術や道具、機械などが導入される業界であるため、常に情報や知識・経験をアップデートさせておく向上心が必要となります。
現場代理人が工事現場で用いる道具や機械の知識に乏しいことが露見してしまえば、作業員たちへの信用を損なうことになり、また発注者からの信頼も損なうことに繋がってしまいます。そのため、現場代理人として幅広い知識や経験が必要不可欠です。
4:経営者の代理を務める経営視点の知識
工程管理や安全管理など、工事現場と直接関係する業務も数多くありますが、これ以外にも予算管理や労務管理といった経理能力が求められる仕事内容も現場代理人が担います。
現場代理人として会社に雇われている以上、企業に利益をもたらす必要があり、目標利益の達成や顧客満足の獲得に努めることも必要不可欠です。
また値段交渉などでは交渉力が試される場面もあるため、現場代理人は経営者の代理として経営視点の知識なども要求されることになります。
現場代理人の需要や将来性
建設業界は、東日本大震災による復興工事や東京オリンピック関連の建設などで供給が需要に追いついていないという状態です。
また、東京オリンピック以降も2025年に開催される大阪万博や2027年に開業されるリニアモーターカーなど大規模なイベントが控えているため、現場代理人の需要も高いまま維持されています。
さらにマーケットとしては、高度成長期のインフラや施設が老朽化時期に突入しているため、これらの補修や建て替えなどで工事需要が見込まれていることから、将来性についても期待できるでしょう。
ただし建設業界においては若い世代が少なく、就業者の高齢化が顕著となっています。
また「人手不足」といった建設業界全体の課題にも直面しているため、「雇用の促進」や「労働環境の改善」、「現場スタッフの待遇の改善」といった取り組みが検討されています。
現場代理人の業務遂行におすすめの資格6選
ここからは現場代理人の業務を行うにあたっておすすめの資格や免許・講習などを紹介していきます。現場代理人になるために必要不可欠な要件や資格は設けられておりませんが、工事現場の責任者として幅広い見識が求められることは当然のことです。
これから紹介する資格は、どの工事現場においても活用することができる将来性のある資格です。今後のキャリアアップや転職活動などにも有利な要素となるため、積極的に資格・試験に挑戦し、取得しておくことをおすすめします。
1:1・2級施工管理技士検定
建築施工管理技術検定は建築工事の実施に当たって、その施工計画や施工図の作成、工事の工程、品質、安全管理等の施工管理を適切に行うために必要な知識が備わっていることを証明する検定試験です。
現場代理人としての管理能力をこの検定によって証明することができ、転職する際にもメリットになるため、将来性のある資格と言えます。
建築施工管理技術検定は、「1級」と「2級」に区分されています。1級では一次検定において「建築学等」、「施工管理法」、「法規」が対象科目となり、二次検定では「施工管理法」を対象として試験が実施されます。
2級に関しては一次検定が1級と同様の対象科目となり、二次検定では「施工管理法(種別が建築の場合)」、「躯体施工管理法(種別が躯体の場合)」、「仕上施工管理法(種別が仕上げの場合)」に分類されています。
出典:施工管理技術検定|一般財団法人 建設業振興基金
参照:https://www.fcip-shiken.jp/
2:電気・通信工事担任者試験
電気・通信工事担任者は、電気通信回線(インターネット回線・電話回線・光回線)などの端末設備などを接続するために必要な資格です。
電気通信工事や電気工事関係の業務に携わる場合は、需要の高い資格と言われており、現代のネットワーク社会を支えるためには将来性のある必要不可欠な資格と言えます。
この資格を取得することで実際に工事するだけでなく、工事の監督業務を行うことができるため、現場代理人としても生かすことができる資格です。資格試験において学歴や業務経験、年齢などの受験資格は設けられていないため、だれでもこの試験を受験することができます。
出典:電気通信国家試験センター|一般財団法人 日本データ通信協会
参照:https://www.shiken.dekyo.or.jp/charge/index.html
3:1・2級建築施工管理技士検定
1・2級建築施工管理技士技術検定は、国土交通大臣が指定する機関が実施する国家試験です。
1級建築施工管理技士資格を取得することで、特定建設業における「営業所ごとに置く専任の技術者」および工事現場に配置する「監理技術者」として認められます。
2級建築施工管理技士資格の取得では、一般建設業の許可を受ける際に必要となる「営業所ごとに配置する専任の技術者」および「建設工事における主任技術者」として認められるため、施工管理業務に携わる場合には必要不可欠となる資格です。
これらの資格は、建設業関係の資格の中でも資格取得によってさまざまなメリットを享受することができ、工事現場における施工管理上の技術責任者として高く評価されているため現場代理人にも大いに役立つ資格であり、将来性のある資格と言えます。
出典:建築施工管理技士検定|日本建設情報センター
参照:https://www.cic-ct.co.jp/course/building
4:酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習とは、密閉されたトンネルや下水道工事など、作業員が酸素欠乏・硫化水素中毒に陥る危険性のある場所で作業をする場合、作業方法を適切に決定したり、換気装置の点検を行ったりするための技術講習です。
とりわけ、危険をともなう仕事内容において、この講習が役に立ちます。
受講資格は特段設けられていませんが、実際の業務につけるのは、18歳以上といった規制があります。現場代理人として安全管理業務を担うため、このような技能講習の受講もおすすめです。
出典:酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習|中央労働基準協会支部
参照:https://www.toukiren.or.jp/shibu/chuo/sanketuginou.html
5:高所作業車免許所得
高所作業車を運転する場合には、高所作業車免許の取得が必要です。トラック式などで公道を走行する場合には、高所作業車運転資格だけでなく、車を運転するための自動車免許も必要となります。
必要とされる免許は、運転する高所作業車の車両総重量によって異なり、準中型自動車免許(車両総重量3.5トン以上7.5トン未満の場合)、中型自動車免許(車両総重量7.5トン以上11.0トン未満の場合)、大型自動車免許(車両総重量11.0トン以上の場合)が必要になります。
工事現場においてはさまざまな機械を用いて施工を行うため、このような作業車の免許を保有しておけば、現場代理人としての見識を広げることができます。また規模の大きな工事現場に携わることもできるため、将来性のある免許です。
出典:高所作業車運転技能講習|一般社団法人 労働技能講習協会
参照:https://www.rougi.or.jp/course/tokyo/kousyo
6:小型移動式クレーン免許所得
小型移動式クレーン免許を取得することで、つり上げ荷重能力5トン未満の小型移動式クレーンを運転することができます。
具体的には、トラッククレーンやホイルクレーン、クローラークレーン、浮きクレーン、鉄道クレーンなどが挙げられます。ただし、小型移動式クレーン免許だけでは玉掛け業務には就けないため、これに加えて「玉掛け技能講習」の修了が必要となることに注意が必要です。
高所作業車運転免許と同様に将来性があり、さまざまな作業車免許を保有して、現場代理人としての見識を広げることで、さまざまな工事現場において活躍することができます。
出典:小型移動式クレーン運転|一般社団法人 中部労働技能教習センター
参照:https://www.ginosenta.or.jp/course/420/
やりがいのある現場代理人への転職を目指そう
ここまで工事現場における現場代理人の仕事内容などについて解説してきました。工事現場における最高責任者としての立場で業務を遂行するため、やりがいのある仕事と言えます。
また経営者の代理として工事現場の最高責任者の立場で仕事をする以上、豊富な知識と高度な技術は必要不可欠です。そのため、ここで紹介してきた資格や検定などに積極的にチャレンジし、現場代理人になるための知識や技術を習得しておくようにしましょう。
これらの資格・検定は、現場代理人のみに限らずさまざまな局面で生かすことができるため、自分自身にとって大きなメリットとなります。まずは、自分の興味のある資格や仕事の直結するような試験に挑戦し、キャリアアップの転職をしてみてはいかがでしょうか。
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