移動式クレーン運転士とはどんな資格?試験概要5つとクレーン免許の種類を紹介
目次
移動式クレーン運転士とは
移動式クレーン運転士とは、5トン以上の荷物を運ぶ移動式クレーンを運転できる資格です。
移動式クレーンは建設現場でよく使われているため、建設業界において需要がある資格とされています。
移動式クレーン運転士の特徴
・対象機械
移動式クレーン運転士の資格の対象となるのは、吊り上げ荷重が5トン以上の移動式クレーンです。
移動式クレーンとは、原動力を内蔵し、不特定の場所に移動できるクレーンのことを指します。
ラフテレーンクレーンやクローラクレーンなどが対象です。
・公道を走行する場合は別に資格が必要
移動式クレーン運転士の免許だけでは公道を走行できません。
中型自動車免許、大型自動車免許など、クレーンの土台部分に対応する免許が必要です。
公道以外を走行する場合は、運転免許は不要です。
移動式クレーン運転士の将来性
移動式クレーン運転士は、将来性の明るい材料が多い職種です。
経験が重視されるため、定年を迎えても働き続ける場合が多く、操作するクレーンの種類を変更したリ、大型から中型や小型に変更したりして自分の体力に応じた働き方ができます。
移動式クレーン運転士の経験を活用して、安全担当者や教育担当者として企業に貢献する活動方法も選択可能です。
建設業界は人材確保が難しい業界のひとつで、中でも資格が必要な移動式クレーン運転士は需要に供給が追い付かない情況が続いています。
資格を取得すると安定した需要があり、将来的に長い間活躍できる業務です。
移動式クレーン運転士の試験内容について
移動式クレーン運転士の試験は、学科と実技の両方に合格しなければなりません。
試験は全国の安全衛生技術試験協会の各センターで開催されます。
1年間に6回実施されるので、計画的な試験準備が必要です。
学科試験の時間は、午後1時開始の2時間30分間で、科目免除者は同じ時間に開始して2時間で終了します。
実技試験は受験票に記載された時間で実施されます。
午前と午後に別れて実施されるため、受験票を受け取ったら必ず確認します。
学科試験と実技試験の試験内容を紹介します。
学科
移動式クレーン運転士の学科試験は、5肢択一方式で実施されます。
試験科目は「移動式クレーンに関する知識」「原動機及び電気に関する知識」「移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識」「関係法令」の4つです。
出題は各科目10問、全科目で40問程度出題されます。
配点は、各30点が移動式クレーンに関する知識と原動機及び電気に関する知識、残り2科目が各20点です。
合格するためには、それぞれの科目で40%を取った上で合計60%以上が必要です。
移動式クレーンに関する知識は、種類及び型式、主要構造部分、つり上げ・起伏・旋回等の作動をする装置などが該当します。
原動機及び電気に関する知識は内燃機関、蒸気機関、油圧駆動装置、感電に関する危険性が範囲です。
移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識は重心、重量、ワイヤロープの掛け方と荷重との関係など荷重や力に関する内容になります。
関係法令では、労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、安衛則及びクレーン則中の関係条項が対象です。
試験範囲などは過去問を参考にして、把握します。
実技
移動式クレーン運転士の実技試験は、「移動式クレーンの運転」「移動式クレーンの運転のための合図」が試験科目です。
移動式クレーンの運転の試験方法は、重量を確認してから荷をつり上げたまま定められた経路を通って運搬し、指定された位置におろします。
移動式クレーンの運転のための合図は、手や小旗などを使用し、荷のつり上げと運搬、おろす動作などが対象です。
試験に使用する移動式クレーンは、トラッククレーン・ホイールクレーン・クローラクレーンの中から、つり上げ荷重が5t以上のタイプを使用します。
経路にはポール障害やバー越え障害物、壁障害物が設置され、つり荷の形状は重量500kg以上の円筒形です。
合図の試験は5肢択一方式で、基本的な合図から出題されます。
実技試験の場合、減点の合計が40点以下であれば合格です。
免除科目
以下の要件を満たしていれば、科目の免除を受けられます。
・クレーン・デリック、旧クレーン、旧デリック、揚貨装置運転士免許を持っている場合は、学科の3と実技の2が免除
・移動式クレーン運転実技教習を修了し、その日から1年以内の場合、実技が免除
・鉱山で吊り上げ荷重が5トン以上の移動式クレーンを使用した業務の経験が1ヶ月以上ある場合、実技が免除
・移動式クレーンの学科試験に合格し、その日から1年以内の場合、学科が免除 など
※出典:公益財団法人安全衛生技術試験協会「移動式クレーン運転士」
公益財団法人安全衛生技術試験協会「受験資格」
移動式クレーン運転士を受験するポイント5つ
移動式クレーン運転士の試験を受ける際のポイントは、受験資格や受験料の確認です。
合格後の手続きも事前に確認しておきます。
免許試験結果通知書の学科試験の欄に「合格」と記載があった場合は、学科試験の実施日から1年以内に実技教習を修了してから免許申請の手続きを行います。
実技教習を先に修了してから、1年以内に学科試験に合格した場合も同じ手続きで免許申請が可能です。
免許申請書に必要事項を記入し、必要な書類や写真、切手を貼った返信用封筒などを添付して住んでいる地域を管轄する都道府県労働局長に申請します。
合格しても手続きを行わないと免許が交付されないので、注意が必要です。
受験するポイント1:受験資格
移動式クレーン運転士の学科試験の受験資格は、特にありません。
実技試験は、学科試験合格後か学科試験を全部免除された場合にしか受験できません。
受験申請を行う場合は、氏名や生年月日、住所を確認できる本人確認証明書の添付が求められます。
個人番号が記載されていない住民票以外は、コピーを使用できます。
健康保険被保険者証や自動車運転免許証は、表と裏の両面のコピーが必要です。
ボイラー技士などの労働安全衛生法関係の各種免許証を保有する場合は、表と裏の両面をコピーすれば本人確認書類として利用可能です。
個人番号カードを利用する場合は、表面だけをコピーして提出します。
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もし、住所の記載がない書類を利用する場合は、本人宛の郵便物を使用できますが、氏名と住所が記載されたものに限定されます。
労働安全衛生法関係の免許証を利用する際、引っ越しなどで住所が変わった場合も郵便物のコピーを添付すれば大丈夫です。
受験するポイント2:受験料
移動式クレーン運転士の試験の受験料は、学科試験が6,800円、実技試験が11,000円です。
支払は銀行か郵便局で、受験申請書にとじ込みの払込用紙を必ず使用します。
払込用紙は5枚つづりで、ATMでは利用できません。
窓口だけで手続きが可能なため、面倒でも店舗で行います。
支払が完了したら、払込用紙の右側2枚の領収印を確認して、申請書の指定された欄に「振替払込受付証明書(お客さま用)」を貼り付けます。
「振替払込請求書兼受領書」は領収書の代わりとして保存しておきます。
受験票が発行されると試験手数料は返還されないので、受験料を払い込んだらできるだけ受験するよう心掛けます。
受験するポイント3:合格率
令和元年度の移動式クレーン運転士の学科試験の受験者数は5,522人です。
合格者は3,604人ですので、65.3%が合格しています。
学科試験に合格しないと、実技試験を受験できません。
学科試験合格者と学科試験免除者が受験する実技試験の合格者は、近年60%程度です。
この結果から、全体の受験者から学科と実技両方の合格者は40%~50%程度です。
学科だけで判断すると他の資格試験よりも合格者割合が多めですが、実技試験の対策ができないため、総合的な割合が低下します。
移動式クレーンの操作練習の機会が少ないことが影響しています。
受験するポイント4:難易度
移動式クレーン運転士の試験は、合格者割合から判断すると学科試験がそれほど難しくありません。
過去問が公開されているため、対応できる点が得点につながっています。
公開された過去問には、実際の試験問題もあります。
問題の把握と同時に出題用紙を体験できるチャンスですので、必ずチェックします。
また、試験対策として教習機関に通う方法が一般的です。
事前に教習機関で対策を行えば、学科と実技両方の試験で得点を伸ばせます。
受験するポイント5:教習所の位置
移動式クレーン運転士の試験対策に欠かせない教習所は、日本全国にあります。
コマツ教習所やコベルコ建機教習センター、日立建機教習所などクレーンメーカーの教習所も日本各地で開講しています。
この他、クレーン学校や自動車学校、ポリテクセンターでも対応可能な場合もあります。
クレーン協会では、実技試験資格取得のための教習開催日は限定されていることも多いので、教習を修了してから受験手続きをします。
移動式クレーン運転士とクレーン・デリック運転士免許の違い
クレーンの運転士免許は、クレーン・デリック運転免許3種類と、移動式クレーン運転士免許の4種類です。
以前の免許はクレーン運転士と移動式クレーン運転士でしたがデリック免許が統合され、クレーン・デリック運転士免許になりました。
デリックは荷の吊り上げを目的にして、水平移動は含みません。
この他に揚貨装置運転士免許があり、船舶に取り付けられた荷役作業に使用するクレーン運転士免許です。
クレーン・デリック運転士免許の種類3つ
クレーン・デリック運転士免許はクレーン限定と床上運転式クレーン限定、限定なしの3種類です。
移動式クレーン運転士免許とクレーン・デリック運転士免許は、それぞれの試験に合格しなければ取得できません。
しかし、クレーン運転士免許及びクレーン・デリック運転士免許の変遷によって、取得した時期で同じ免許でも異なる作業に従事できます。
玉掛け業務にも影響する内容ですので、雇用する場合は細かく確認します。
クレーン限定
クレーン・デリック運転士免許のクレーン限定免許は、デリック以外のクレーンを全て運転できます。
つり上げ荷重が5t未満のクレーンと、5t以上のクレーン、床上運転式クレーンと床上操作式クレーン、鉄道専用の跨線テルハの運転が可能です。
床上運転式は免許によって運転ができ、床上操作式は技能講習を受講して運転できるようになります。
つり上げ荷重は、荷の質量にフックやグラブバケットなどつり具の質量も加えた数値です。
床上運転式クレーン限定
床上運転式クレーン限定免許は、5t未満のクレーンと床上運転式、床上操作式と跨線テルハが操作できます。
クレーン限定免許で操作できた5t以上のクレーンは操作できません。
床上運転式はクレーンの走行に合わせて移動する方式のクレーンで天井クレーンのメッセンジャー方式や定位置方式です。
床上操作式はホイストやトロリから押しボタンスイッチが直接つり下がった型式で、荷の移動に合わせて運転士もついて移動します。
限定なし
クレーン運転士免許で限定なしは、デリッククレーンの運転が可能です。
限定なし免許で操作できる種類は、5t未満のクレーンとデリック、5t以上のクレーンとデリック及び床上運転式と床上操作式、跨線テルハが含まれます。
具体的な種類は、工場内の橋形クレーンや港湾作業で使用するコンテナクレーンです。
デリック限定の免許はありませんが、限定なし以外の免許でデリック運転の特別教育を受講すると5t未満の運転ができます。
移動式クレーン運転士を取得しよう
移動式クレーン運転士の資格があれば、5トン以上の荷物を運べる移動式クレーンの運転が可能です。
移動式クレーンは建設現場などでよく使用されるので、施工管理技術者などは知っておくと便利です。
また移動式クレーン運転士に限らず、施工管理技術者や施工管理技士などに興味のある方は、ぜひ「俺の夢」で求人を探してみてください。
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