高齢者でも働きやすい環境とは?建築現場での年齢制限や派遣での働き方についても
目次
建設現場で働く年齢制限とは?
現在、建築現場では就業者の高齢化や人材不足が大きな課題となっています。
労働安全衛生法第62条では、事業者は中高年齢者に対して労働災害防止のために、その心身に見合った適正な職場配置を行うよう要請をしています。また、中高年齢者について明確な年齢制限は特に定められていません。
しかし、年齢が上がればそれだけ高所作業など危険な個所が増えてきます。働き手の高齢化が進んでいる建築現場では、労働災害防止のためにも高齢者にとって働きやすい環境作りが重要です。
高齢になると高所作業が危険な理由と対応方法
人間は年齢の変化に応じて個人差はあるものの、身体機能に変化が生じます。
また、東京労働局労働基準部がだしている「高年齢労働者の安全と健康」に記載されている「定期健康診断の年齢別・健診項目別有所見率」によると高齢になればなるほど健康診断で所見のあった者の割合が高くなっています。
そのため、高齢になると労働災害が起きやすい高所作業などは危険になってきます。高齢化が進む建築現場では、年齢制限なく高齢者でも働きやすい環境を作っていくための対策が必要となります。
高齢者でも働きやすい環境にする5つのポイント
高齢者にとって働きやすい環境にするためには、まず直接的な環境整備が必要です。またそれ以外にも、管理体制や教育の場面でも対策を行っていかなければなりません。
次は、年齢制限なく高齢者でも働きやすい環境にするための5つのポイントについて紹介していきます。
- 体力に配慮されている
- 健康について配慮されている
- 転倒や墜落について配慮されている
- 作業時間削減などの配慮がされている
- 高齢者向けの特別教育を実施している
1:体力に配慮されている
個人差はあるものの、人間は加齢に応じて体力が低下してきます。そのため、高齢者が運送作業や重い荷物の取り扱いなどを行うと、バランスを崩したりして労働災害になってしまう可能性があります。
年齢制限なく高齢者が働きやすい環境にするためには、身体能力や体力に適した作業環境になっているかを確認する必要があります。
2:健康について配慮されている
高齢者の健康に配慮した働きやすい環境作りも大切です。
たとえば、高齢者が不自然な姿勢で長時間労働をすると、疲労を感じさせてしまい労働災害につながることがあります。高齢者の身体的な健康を考慮した作業環境になっているかを確認するのもポイントの1つです。
3:転倒や墜落について配慮されている
加齢に伴い、平衡感覚や視力が低下してきます。そのため高齢者の場合、高所などで作業をしているとバランスを崩し、転倒や堕落の可能性が高くなります。また転落した際の骨折なども、高齢者は若い人に比べ、完治するまでに時間がかかる傾向にあります。
高齢者がいる作業の場合は、高齢者の身体能力を配慮した作業手順や配置にするなど、働きやすい環境作りのための対策も必要となります。
4:作業時間削減などの配慮がされている
労働時間が長くなればなるほど、作業への集中力が途切れやすくなり、労働災害発生の可能性が増えます。また過剰な時間外や休日労働は、健康被害をおよぼす可能性を増やすとも言われています。
高齢者の健康障害防止のためにも、労働時間の配慮も高齢者が働きやすい環境作りの1つです。
5:高齢者向けの特別教育を実施している
高齢者に向けての特別教育の実施も大切です。高齢者は物事を理解したり納得したりするのに、若い人より時間がかかってしまう可能性があります。
また視力の低下も発生します。高齢者の教育現場では、教材の文字の大きさや分かりやすさなども配慮していくと良いでしょう。
長く現場で働いている人には1級施工管理技士取得がおすすめ
建築現場で長く働かれている人の場合は、1級施工管理技士という国家資格の取得をおすすめします。
施工管理技士とは、工事の計画を立てたり、現場の管理者になるための資格です。こちらで紹介する検定は7種目で、それぞれ1級と2級に分かれています。
1級施工管理技士の受験資格には、実務経験が必須となっています。そのため、長く建築業界で働かれている場合は、すでに受験資格を満たしている可能性があります。
資格を取得していると、施工技術の指導的技術者として社会的に評価されます。また他にも、高齢者が年齢制限なく働ける職場を見つけやすいなど、資格を所有していると感じるメリットはたくさんあります。
出典:1級 建築施工管理技術検定のご案内|一般財団法人 建築業振興基金
現場で長く働く人におすすめな施工管理技士種目7つの試験概要
施工管理技士の資格は、その現場の種類に応じて7つの検定試験に分類されています。全ての資格を取得する必要はありませんが、1つでも多くの資格を取得しておくと、働きやすい環境を探す際などに有利に働くでしょう。
次は、施工管理技士種目の7つの検定について詳しく説明していきます。
1:建築施工管理技士
建築施工管理技士とは、建築工事現場で施工管理や計画を行えることを証明する資格です。
建築施工管理技士には、1級と2級があります。建築の1級施工管理技士を取得していると、請け負える工事現場の規模に制限はありません。しかし2級は、中小規模の建築工事のみ扱えます。
そのため転職やキャリアアップの際は、扱う建物規模に制限がない1級施工管理技士を取得しておいた方が有利になります。
試験概要
建設施工管理技士は、1級2級にそれぞれ1次試験と2次試験があります。
受験スケジュールは、1級は1年に1回、2級は前期後期に分かれています。2級の前期は1次のみ、後期は1次・2次両方の受験やどちらかのみと、受験スタイルを選択できます。
初めて受験をする人の場合は、オンラインでの申し込みができません。書面申し込みになるため、願書を購入し、申し込みと手続きを行う必要があります。
受験資格
受験資格は1級と2級で異なります。2級の1次試験は、17歳以上ならば年齢制限なく受験をすることが可能です。その際、実務経験年数は特に必要ありません。
一方で1級の場合は、学歴にプラスして実務経験がそれぞれ必要となります。指定学科の大学を卒業している場合は3年以上の実務経験、高校卒業の場合は10年以上の実務経験が必要です。また2級の建築士試験検定合格者の場合も、合格後5年以上の実務経験が必要となります。
そして、それぞれの実務経験年数の中に1年以上の指導監督的実務経験年数を含んでいなければなりません。
2:土木施工管理技士
土木施工管理技士とは、ビルや建物の建設以外にも橋やトンネルなど、土木工事現場でも施工の管理業務をできることを証明する資格です。
この資格も1級と2級があり、級により扱える工事現場の規模に違いが出ます。2級は小規模の土木工事現場で、1級は規模に制限はなく、大きな土木工事現場で管理業務を行うことが可能となります。
試験概要
土木施工管理技士は、それぞれ1次試験と2次試験にわかれています。1次試験は学科試験でマークシート方式です。2次試験は実地試験と呼ばれ、全問記述形式となっています。
受験スケジュールは、1級は1年に1回、2級は前期後期に分かれています。2級の前期は1次のみ、後期は1次・2次両方の受験やどちらかのみと、受験スタイルを選択できます。
受験資格
受験資格は1級と2級で異なります。2級は、17歳以上であればそれ以外の年齢制限や実務経験年数は問われず、誰でも受験が可能です。
一方で1級の場合は、それぞれの学歴に応じた実務経験年数が必要となってきます。大学の指定学科卒業者には3年以上、指定学科以外の場合は4年6か月以上の実務経験が必要となります。
また2級の土木施工管理技士の資格を取得した方も、取得してからの経過年数で必要な実務経験年数が異なるため、受験の際は注意が必要です。
3:管工事施工管理技士
管工事施工管理技士とは、冷暖房設備や冷凍冷蔵設備などの配管工事を行う現場で使える資格です。
この検定試験にも1級と2級があります。管工事の1級施工管理技士を取得すると、その現場の監督技術者であることを証明できます。また2級でも、一般建設業の許可を得るために必要な技術者として認められます。
試験概要
令和3年より、管工事施工管理技士の試験制度が他の検定試験同様、見直されました。
1次試験では以前まで、知識のみが出題されていましたが、新試験では知識にプラスして能力の内容も出題されます。また2次検定では、以前から出題されていた能力に基礎も出題されるようになりました。
受験資格
管工事施工管理技士の受験資格は受験する級によって異なります。
管工事施工管理技士2級は、17歳以上ならば実務経験年数なしで誰でも受験が可能です。その後2次検定に進む場合は、学歴ごとの実務級経験年数が必要になるため、受験する際はしっかりと自身の実務経験を確認しておきましょう。
4:電気通信工事施工管理技士
電気通信工事施工管理技士を取得しておくと、通信ケーブル工事やネットワークの設備の工事など、電気通信工事の責任者として仕事ができます。
現在は一般家庭において、インターネットは欠かせない生活アイテムとなっています。そのため、この資格所有者への需要は今後も増えていくと考えられています。
試験概要
電気通信工事施工管理技士検定試験は、受ける級により受験スケジュールが異なります。
電気通信工事の1級施工管理技士検定試験は、年に1回のみ行われています。1級の1次試験合格者は1級電気通信施工管理技士補に、2次試験まで合格すると、1級電気通信工事施工管理技士となります。
また2級は、前期と後期の年2回に分けられています。前期は1次のみで、後期は1次2次試験両方が行われます。また後期試験では、1次のみ2次のみの単独受験も可能です。
受験資格
電気通信工事施工管理技士にも、級によりそれぞれ受験資格があります。
まず電気通信工事の1級施工管理技士の場合は、学歴に応じた実務経験年数が必要です。そして、さらにその実務経験年数の中に、指導監督的実務経験年数が1年以上含まれていないといけません。
また、2級の2次に合格した人が1級の1次のみを受験する場合、実務経験の必要はなしなど、細かい決まりがあります。一方で2級を受験する際は、17歳以上であれば実務経験なしでも受験をすることが可能です。
5:造園施工管理技士
造園施工管理技士とは、公園や緑地の工事で施工計画を作成したり、監督業務にあたることができる資格です。一般的に大規模な公園作りなどの作業は、造園施工管理技士の資格を持った監督のもとで行われています。
また近年では、高層ビルの屋上に緑を楽しめる空間を作ったりと、都市の緑化対策などでもこの資格所有者は活躍しています。今後さらに需要が増え、注目される資格の1つです。
試験概要
造園施工管理技士の試験は、1級と2級の2次は年に1回、2級の1次は年に2回行われています。1級の1次検定合格者は、1級造園施工管理技士補に2次まで合格すると、1級造園施工管理技士となれます。
試験は1級2級ともに1次検定がマークシート方式の試験で、2次検定が記述試験となります。
受験資格
造園施工管理技士の受験資格は、1級の場合、指定学科の大学を卒業した人は実務経験が3年以上必要です。またその他、学歴により実務経験年数が異なります。さらにその実務経験年数の中に、指導監督的実務経験年数が1年以上必要となります。
2級の1次試験の場合は、他の検定試験同様に17歳以上という年齢制限はあります。しかし、実務経験なしでも受験が可能となります。
6:建設機械施工管理技士
建設機械施工管理技士とは、土木工事・舗装工事・とび・土木工事を行う業者の施工技術者となるための資格です。この資格は、建設機械の操作技能を対象としたものではなく、現場での主任技術者や管理技術者として認められるための資格になります。
建設機械の1級施工管理技士の資格を所有していると、建設機械を使った施工の監督や指導的業務を行えます。
試験概要
建設機械施工管理技士にも1級と2級があり、そしてそれぞれ1次と2次があります。1級2級それぞれの1次に合格すると施工管理技士補に、また2次に合格すると施工管理技士になれます。
1級の試験は年に1回のみ、2級の試験は年に2回行われますが、2回目の試験は1次のみとなります。
受験資格
1次検定の受験資格は、学歴と指定学科で学んでいるかにより異なります。たとえば、指定学科の大学卒業者は実務経験が3年、指定学科でない場合は4年6か月以上の実務経験が必要となります。
一方で2級の1次検定を受験される場合は、実務経験は問わず17歳以上ならば受験が可能になります。
7:電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士とは、建設工事などで必要となる構内電気設備工事や照明設備工事などを行う際の監督・技術責任者として活躍できる資格です。
電気を扱う資格は数多くありますが、この電気工事施工管理技士の資格は、現場の監督業や専任技術者にもなれるため、転職やキャリアアップには有利に働く資格の1つです。
試験概要
試験の概要はその他の施工管理技士の検定試験とほぼ同様です。
1級と2級の2次試験は年に1回のみの実施です。2級の1次のみ前期と後期で2回行われます。
1級2級のどちらも、1次に合格すると施工管理技士補に、また2次に合格すると施工管理技士になれます。
受験資格
電気工事施工管理技士の検定試験の受験資格は、2級を受験する場合は17歳以上ならば受験が可能です。
また1級は、学歴と実務経験年数による受験資格の決まりがあります。大学指定学科卒業ならば3年以上、高等学校の指定学科卒業の場合は10年以上の実務経験年数が必要となります。
その他にも、すでに所有している資格の種類により実務経験年数が異なるため、電気関係の資格を所有している場合は事前に確認をしておくと良いでしょう。
施工管理技士資格を取るメリット
施工管理技士の資格を取得すると、施工技術者の指導的技術者として社会的に高い評価を受けられます。
指定建設業に係る特定建設業者については、1級施工管理技士などの国家資格を持つ人を置く必要があります。そのため1級施工管理技士の資格を所有していると、どの企業も欲しがる人材になることができ、転職などの際には有利になります。
施工管理技士は建設派遣で働くことも選択肢に入れよう
国土交通省が発表した「建設産業の現状と課題」によると、建設業界の人材不足と就業者の高齢化は大きな課題となっています。そのため、1級施工管理技士などの資格を所有していると、建設業界にとっては貴重な存在になることができます。
また資格さえ所有していれば、年齢制限なく働き続けることも可能になるでしょう。
そして働き方としては、建設派遣で働くという選択もおすすめです。派遣と聞くと一般的に低収入のイメージがありますが、人材不足の建設業界ならば、貴重な資格所有者は派遣でも高収入を望める可能性があります。
様々な選択をして希望の現場で働こう
人材不足が課題となっている建設業界では、年齢制限なく高齢者が元気に働き続けることが必要となってきます。
高齢者は一般的に今まで働いてきた知識と経験が豊富です。しかし一方で、加齢に伴う心身機能の変化により、今までと同じ仕事ができなくなる場合もあります。そのため、建設業界で長く働いているならば、1級施工管理技士の資格を取得することをおすすめします。
資格を所有していると、派遣などの様々な働き方を選択できます。年齢制限なく、高齢者が自分に合った働きやすい環境を見つけ出し働き続けることは、現在の建築業界にとっては欠かせない重要な人材となるでしょう。
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