解体工事着手前に必ずやっておかなければならないこととその注意点
解体工事は、「建物を解体して、処分する工事」です。工事が終わると建築地に何もなくなるため、安易に考えてしまうケースが見られますが、トラブルがおきやすい工事の一つです。解体工事は現場で一番初めに行う工事なので、トラブルなく予定通りに工事を進めることで後の工事がスムーズに進みます。解体工事をトラブルなく、スムーズに進めるための注意点をまとめました。
目次
解体工事は工事着手前の準備が大事な理由
解体工事は建築工事を行う際にまず行われる工事で、解体工事がスムーズに行われることで、お施主様の信頼を得ることができ、近隣の方も安心します。
トラブルが起きた場合は、お施主様には不信感が芽生え、後工程の工事で過分な不安や心配をするようになります。また、近隣の目も厳しいものになります。
解体工事をスムーズに進めるためには、当日に慌てたり、近隣からクレームが来たりすることがないように、工事着手前に必要な準備を行うことが重要です。
工事着手前に準備する内容や注意点を「お施主様」、「近隣」、「現場」に分けてまとめました。
解体工事着手前の準備:お施主様編
お施主様に対して解体工事着手前に行うことは主に3つで、「事前打ち合わせ」、「見積りの説明」、「現場での最終確認」です。
お施主様との事前打ち合わせ
お施主様との解体前事前打合わせでは、以下の点を確実に打合わせしましょう。
① 工事日程の確認 解体日指定の有無
工事開始日と工事期間の確認を行います。工事開始日は解体吉日(暦)を選ぶ必要があるか事前に確認しましょう。
② 電気・電話・光ケーブル・ケーブルTV等の外部配線の確認及びガス止めの確認
建物につながっている外部からの引込み配線の確認を行い、取外し日を決定します。また、敷地内にガスを供給している場合には、ガスを止める手配の確認を行います。
③ 上水道の給水管の確認
解体工事では水を使用しますので、仮設水道を解体工事前に設置します。事前に水道配管が敷地内にどのように配管されているか確認し、工事中の漏水トラブルがないように仮設水道の位置を決定します。
④ 浄化槽の確認
浄化槽を使用している建物の場合、現在使用している浄化槽をどのようにするか確認しておきましょう。今の浄化槽を新築後も続けて使用する場合は、解体前に汲取り及び清掃が必要になります。また、浄化槽が工事に支障がないか、解体工事中に破損しないように養生も確実に行っておきましょう。
また、浄化槽を入れ替える場合は、最終使用日後に汲取り、清掃を行うこと、お祓いの要・不要、撤去・埋戻しの方法などを事前に打ち合わせておきましょう。
⑤ 井戸の有無
井戸水を使用している場合は、これからも使用するのか、使用をやめるのか確認を行います。井戸水をやめる場合は、どのように処理をおこなうか打合わせをします。お祓いや埋戻しについても確認をしておきましょう。
⑥ 残置物の確認
解体する建物内に残す家具や家電製品、生活用品などの確認を行います。このように建物内に残す家具や家電などを残置物といいます。残置物が多い場合、予定通りの日程や見積もり金額で解体工事ができなくなるため、残置物の種類と量の事前確認が必要になります。
⑦ 植木・カーポート・ブロック等の解体範囲
解体工事は建物以外に敷地内の物置や植木・カーポート、隣地境界に設置されているブロックやフェンスなどの解体をどうするかも確認します。お施主様の残したいものが工事に支障はないのか、これからの工事に対する判断も必要です。
⑧ マニフェストの説明
解体工事は、法律により分別解体が義務付けられています。そのため、工事は分別をしながら行います。お施主様によっては、分別解体作業を見て、「工事の進みが遅い」、「解体物が現場にあると不安」などのクレームになるケースがあります。分別解体のため、解体には順番があり、廃棄物の処分方法も解体物により異なることなど事前に説明しておきましょう。
⑨ 近隣挨拶の範囲
工事着手前の近隣挨拶の書面及び近隣挨拶を行う家の確認を行います。近隣との関係は表面的なことだけではわかりません。お施主様の確認を行い、漏れのないスムーズな近隣挨拶を行いましょう。
見積もりの説明
解体工事を行う前に再度見積もり内容の確認を行いましょう。引っ越しや解体工事を行う段階になり、建物内の残置物の増加、敷地内解体物の変更などがある場合があります。建物内残置物と敷地内解体物は見積もり金額を大きく左右します。引っ越しが終わるころに改めてお施主様と打合わせを行い、お互いの認識の差がないようにしておきましょう。
また、解体工事中に新たな埋設物を発見した場合の対応方法も事前に確認しておきましょう。追加費用の発生やケースによっては工事期間が延びるなどの話をしておきましょう。
現場での最終確認
解体工事前日までに現場での最終確認を行いましょう。建物への引き込み線の処理、建物内残置物の確認、敷地内解体物の確認を現場で行います。
解体工事で特に気を付けなければならないのが、引き込み線トラブルによる近隣断線、被解体物の解体によるトラブルです。
電気や電話・光ケーブルなどの断線トラブルは、直ぐに復旧することができません。確実に引き込み線の取外し処理ができていることを確認しましょう。
また、解体する予定のない物を解体してしまった場合、解体物を元の状態に戻すことは不可能です。ケースによっては、解体工事自体が中止になることもあります。「解体しないもの」の確認は、確実におこなっておきましょう。
解体工事着手前の準備:近隣編
解体工事着手前に近隣への対応は主に2つで、近隣挨拶と近隣の工事前準備です。
近隣挨拶のポイント
近隣挨拶は主に5つのことに注意して行います。
① 近隣挨拶は必ず工事前に行う。
② お施主様に挨拶する予定の家を報告し、他に必要な家がないか確認をする。
③ 口頭だけの挨拶ではなく、書面も一緒に渡し挨拶する。
④ 書面には、工事期間や時間、連絡先を明記する。
⑤ 解体工事中は騒音、振動があり、埃がでることなども説明しておく。
埃が出るため、洗濯物の室内干しをお願いしておくとトラブルが防げます。
工事期間と時間の説明の注意点
さらに、近隣挨拶で行う工事期間と時間の説明は以下の点に注意しましょう。
・工事期間
工事期間は、工事が延びることも想定し予定より数日長く設定しておきましょう。予定より早く工事が終了するのは大丈夫ですが、工事期間が延びてしまった場合にはクレームになるケースがあるからです。
また、土日・祭日の工事を行うかどうかも一緒に連絡しましょう。休日に遅寝をする方もいらっしゃいます。近隣の方も工事の有無がわかれば事前に対処することができます。
・工事時間
近隣挨拶では、工事期間だけではなく工事時間も知らせるようにしましょう。乳幼児や高齢者、受験生がいるかもしれません。いつ工事が終わるか時間がわからないといらいらしますし、外出して過ごすなどの対応もできません。毎日の工事時間を知らせることで、クレームを防ぐことができます。
工事前の近隣準備
解体工事前の道路状況や隣地との境界、隣地建物の状況を写真撮影しておきましょう。ひび割れや破損トラブルが起きた時に、工事前の状況とトラブル後の状況を比較するためです。写真を撮影しておくことで、トラブルが起きた後の処理をスムーズに行うことができます。
道路前の側溝に穴のあいた蓋のカバーがある場合は、工事前に穴カバーを設置するようにしましょう。工事中の水撒きや雨で敷地内の土が側溝に入ってしまった場合、側溝の流れが悪くなります。事前に対処しておきましょう。
解体工事着手前の準備:現場編
解体工事着手前に現場で行うことは主に解体現場の最終確認・工事業者打合わせ・保険の加入の3つです。
解体現場の最終確認
解体工事着手直前に、準備が確実に行われているか確認を行います。
① 外部引き込み線の取外し・処理
電気・電話・光ケーブル・ケーブルTVなどの建物内引き込み線が取り外され、処理されているか確認を行います。外されていない引き込み線があった場合は、早急に手配をしましょう。
② 仮設水道の確認
解体工事は埃がでるため、放水しながら解体を行います。水が使えないと近隣に迷惑がかかります。水が使用できる状況にあるか確認しましょう。
③ ガス供給止めの確認
解体工事の際、ガスの供給が止まっていないと大きなトラブルとなるケースがあります。確実にガス供給が止まっていることを確認しましょう。
④ 解体物と残置物の確認
わかりにくい解体物と残置物は貼紙をするなど、マークをつけてわかりやすいようにしておきましょう。間違って被解体物を解体してしまわないように細心の注意が必要です。
工事業者との打合わせ
工事業者とは、現場で事前に打合わせを行います。解体しない物の確認、埋設物の確認、井戸や浄化槽の処理方法の確認を行います。解体、処分に迷う物があった場合は、解体する前に必ず連絡をし、勝手な判断で解体しないことなどを伝えましょう。
また、解体工事は騒音、振動がともなうので、工事日や工事時間の厳守を徹底しておきましょう。
保険加入の確認
解体工事は重機を扱って行う工事のため、工事中にトラブルが起こることがあります。「隣地のブロックの破損」、「隣家の外壁のひび割れ」、「側溝の破損」、「足場倒壊」などいろいろなケースがあります。労災保険以外に「損害賠償責任保険」に加入しているか解体業者に確認しておきましょう。保険に加入していない業者には、早急に加入することを依頼しましょう。加入しない場合には、工事業者を変更することも必要です。
まとめ
解体工事は工事後に何かが残る工事ではありませんが、配慮しなければならないことが多い工事です。スムーズに解体工事を終わらせるには、確実な工事準備が必要です。ひとつずつ丁寧に準備しスムーズな現場管理を行いましょう。
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