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曳家工法の種類3つ|曳家に関する知識3つや事例もあわせて紹介!

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公開日時 2023.02.17 最終更新日時 2023.02.17

曳家とは

曳家(ひきや)とは建築物や重量物をそのままの姿で移動させることです。

曳家は歴史的建造物や橋、ビルや一般住宅などを別の場所に移動するために行う工法で、建築物の保存や区画整理に利用されます。移動と同時に嵩(かさ)上げや家の向きを変えられ、居住環境の改善にも役立ちます。

愛着ある建物を利用でき、解体・新築よりも廃棄物が少ないので、地球にやさしい工法です。

曳家業界とは

曳家業界は建設業界で保存分野に属し、重量鳶(とび)職系と宮大工・船大工の曳大工系があり、日本各地で専門業者が活動しています。

大工や左官と共同作業で行いますが、需要が少ないので存在自体を知られていません。近年は震災復旧工事や弘前城の保存工事で話題になりました。

曳家工法はテコとコロの原理を利用した、古代ピラミッドの石材移動に使われた歴史ある手法です。

曳家業界の仕事の特徴

曳家が活躍するのは、建物の移動や沈下修正、文化財の保存分野です。

建物を移動させて地盤を補強・補修する工事や、公共工事に伴う建物の移動、文化財の移築・補強工事が主な仕事です。独特の技術と経験が必要で、使用する道具や機器も重いので重労働です。移築物を破損させないための責任も重大です。

施工数が少ないので経営が厳しく、後継者不足と技術の伝承が課題です。

曳家工法の種類3つ

曳家の主な工法は、姿曳移動と基礎共移動、腰付移動の3種類です。

建物をそのままの姿で移動させますが、土台の下に鋼材を入れるか土台と床(ゆか)の間に鋼材を入れるか、基礎部分も全部移動させるかの違いで分類します。

建物の種類や痛みの具合、地盤工事など同時に行う工事によって工法を選定します。それぞれの工法にメリットがあります。

曳家工法の種類1:姿曳移動工法

姿曳移動工法は下腰工法・下受工法とも呼ばれるオーソドックスな方法です。

木造住宅に適した曳家工法で、基礎部分に鋼材を通すための穴を開けて鋼材や角材で建物を下から支えて移動させます。床下工事なので生活に影響はありませんが、基礎に穴を開けるため移動後基礎部分の再工事は必要です。

水道の配管工事が別途必要になるので、基本的に移動中の給排水は停止させます。

曳家工法の種類2:基礎共移動工法

基礎共移動工法は総受工法とも呼ばれ、基礎部分も含めて建物を移動します。

鉄筋コンクリート造や軽量鉄骨住宅、ツーバイフォー住宅を移動させるための工法で、重量に耐えるので土蔵の移動にも利用されます。基礎部分から持ち上げるために、地盤を掘り下げます。

アパートやマンション、店舗の駐車場を広げるためや公共工事による移動に多く利用されます。

曳家工法の種類3:腰付移動工法

腰付移動工法は上腰工法・上付工法とも呼ばれ、神社や仏閣、木造住宅の工事に利用されます。

木造住宅の場合は、敷居より上に鋼材を組んで持ち上げます。下に通した鋼材や角材と柱をワイヤーや締付ボルトで固定して移動させる場合もあります。基礎部分を新築同様に作り、その上に設置するので、強度を下げません。

神社や仏閣は土台が傷んでいるものや土台がないものもあるので、腰付移動工法を利用して修繕作業を行います。

曳家に関する知識3つ

曳家に関する知識3つ

曳家工法を利用すると、地震など自然災害で発生した地盤沈下に対応でき、立て直すよりも工事費が安くできます。

傾いた家の地盤を修正や嵩上げで住環境を改善したい時に曳家工法を利用すると住んでいる家をそのまま利用できるメリットがあります。費用を節約できる他、引っ越しの必要もありません。

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施工例が少ないので、事前に作業の流れを把握すると必要な準備が明確になります。

曳家に関する知識1:不等沈下への対応

地震など自然災害で不当沈下が発生した際の地盤改良工事の際、曳家工法で住宅の移動が可能です。

不当沈下によって建物が水平に保てなくなり、雨漏りや亀裂、排水管の損傷の他、不眠や頭痛など人体にも影響します。建物自体の損傷がない場合は、曳家によって移動させ、その間に地盤改良工事を行って、元の位置に戻します。

移動させた住宅は住み続けられるので、工事期間中の不便が少なくできます。

曳家に関する知識2:建て直しよりも安くなる

曳家工法は建て直しよりも費用を節約でき、廃棄物が少ない工事手法です。

解体と新築以外にも、建設期間中の仮住居や引っ越しなど、立て直しは多額の費用がかかりますが、曳家工法は住み替え作業が不要で仮住居期間を短縮できます。解体した家屋や新築の際に出る廃材もなく、エコな工事方法です。

建物を敷地内に移動できる場所や、周辺にさえぎる物がないことが条件になります。

曳家に関する知識3:曳家の施工手順

曳家は、準備期間と施工期間、引渡し期間の大まかに3つの手順で進めます。

準備期間は移動場所と経路の障害物、曳く距離や角度、高低差を確認し見積作成します。建築基準法や構造計算も考慮し、鬼門など方角にも配慮します。施工期間は仕組み・揚方・移動・下方・据え付けなど建物の移動と設置を行います。

引渡し期間に配管や玄関等の工事、外構や庭を整え元通りにして完了です。

曳家工事に適した事例3つ

曳家工事は公共工事による建物移動や災害工事、敷地の有効活用に適した工法です。

地盤改良や補強に利用できる他、神社や仏閣など歴史的建造物の保存や修復、古民家再生に活用されています。建物の種類に関係なく施工できる点もメリットです。

費用を抑え、工事期間中に従来の生活や店舗の営業が継続できる点に着目した事例を紹介します。

曳家工事に適した事例1:公共工事

公共工事の建物立ち退きの際、曳家工事は費用と住み替えの手間を抑えられます。

公共工事の立ち退きは、新築で算出されません。多少の建物移動で済む場合は、解体するより曳家工事のほうが費用を抑えられます。住み慣れた建物や家財道具をそのまま利用できる点もメリットです。

従来の生活環境を保て、地域コミュニティも維持できます。

曳家工事に適した事例2:災害工事

災害による復旧工事で、使える建物を利用でき、文化財の移築保存もできます。

不当沈下など地盤だけの工事が必要な場合、建物をそのまま活用できる曳家工事は工事費用を抑え、工事期間を短縮できます。文化財や古民家の保存・移動や、公共施設の復旧に合わせて免振装置の導入や嵩上げも可能です。

従来の街並みの復元は、被災者にとって災害からの復興を実感できます。

曳家工事に適した事例3:土地活用工事

曳家工事を利用すると、店舗の営業を続けながら駐車場の拡幅工事が行えます。

曳家工法は建物全体を持ち上げるので、住宅の階下にガレージの新設工事も可能です。マンションの階下にコンビニやテナント店舗などの新設で収益を上げ、リフォームなしで建物の資産価値を高められます。

短い工期で費用を抑えて、限られたスペースを有効活用できます。

曳家について知ろう

曳家工法は建設の保存分野の業界で、鳶や宮大工・船大工が行ってきた伝統技法です。

曳家工事は居住したまま沈下修正や補強工事が施工可能で、新築工事より安い価格で短期間に終了する点も魅力です。

需要が少なく、重労働で後継者不足ですが、現存する建物を長期利用できます。公共事業や復旧作業、土地活用の他、文化財の保存や補修作業にも大きく貢献しています。


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