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引き戸の特徴やメリットを解説|故障の原因や修理する際の注意点も紹介

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公開日時 2023.02.15 最終更新日時 2023.02.15

引き戸とは?


引き戸とは、家の室内や玄関などで使われる、扉をレールや溝を作ってその上を滑らせて開閉する扉のことです。
元々は障子やふすまなど和風建築に見られる和風の住宅でよく使われ、室内以外でも収納庫や玄関にも利用されています。

引き戸には従来の一般的な溝やレールに沿って動かす引き戸、戸車が戸に埋め込まれてスムーズに開閉できるようにしている引き戸、そして最近では、上吊りタイプと呼ばれる、上にレールと取り付けて開閉できるようにしている引き戸があります。

従来は、溝を単に滑って開閉していましたが、戸の重さによっては溝の滑りが悪くなる問題がありました。
そこで戸を開閉しやすくするために、戸車と呼ばれる部品が戸に埋め込まれ、戸車がレールや溝を滑るようにして重たい戸でも少しの力で開閉ができるようになっています。

これまでは上下にレールのある引き戸が主流でしたが、最近では上から戸を吊るした、上吊り式の引き戸がリフォームやバリアフリーの観点から採用されるようになってきました。
上吊りタイプは、リフォームの場合元の戸の枠の大きさや厚みを気にすることなく、上にレールを付けて戸を吊り下げ、開け閉めできるようにしたものです。

上吊りの引き戸でよく見受けられるのは、ソフトクローズと呼ばれる、少しの力を加えただけで最後まで戸が閉まるようにする、開閉アシストの部品です。
戸を閉める時に、戸が完全に閉まるように最後まで力を加えなくても、少しの力を加えるだけで半自動的に閉まるようにサポートしてくれます。
この部品は、小さい子どもがいる家庭や年配の方に好まれており、最近の住宅やリフォームの際に取り付けられることが多くあります。

ここでは、それぞれのタイプによって確認すべき箇所、故障の原因と修理方法をまとめています。

引き戸の種類4つ


引き戸には主に4種類あります。

左右に分かれてどちらの方向にも引ける引き違い戸、引いた戸を戸袋と呼ばれる壁の中心に収納させる片側の引き込み戸、広い間口で中央から左右に開閉し、開放感の出る引き分け戸、戸は1つで片側の壁に戸を開くと納まる片引き戸があります。

引き込み戸は、すべての戸を収納するとどちらの壁からも戸が見えないため、すっきりとします。
片引き戸は、開くと壁の一部に収納されるため、片方は壁となり、後ろ側は戸になります。
壁側には家具を置くことができます。

1:引き違い戸

引き違い戸は、2つ以上の扉で構成され、左右の扉に分かれており、右左どちらの方向に引いても開くことができるタイプの引き戸です。
左右どちらの方向でも開閉できるため、使い勝手の良い戸になります。

引き違い戸は、和風建築ではふすまや押し入れなどでよく使用されています。
また、掃き出し窓や腰掛窓などの窓ではよく見かけ、2枚の戸が重なりながら左右どちらにも動かせるような仕組みになっています。
一般的には正面向かって右側の戸が手前側になります。他にも玄関などに使用されることもあります。

引き違い戸は、一定の幅は必要になります。
大きな開口部がとれる場合は、戸の枚数によって2枚以上の戸、たとえば3枚もしくは4枚にすることがあります。
複数の戸を使用することで、より開放感のある空間になります。

引き違い戸は構造上、気密性に劣る場合もありますが、その場合はモヘアやピンチブロックなどの気密材を使用します。

2:引き込み戸

引き込み戸は、引いた戸を壁の中に収納する引き戸です。
壁に戸を入れる戸袋と呼ばれるスペースが作られます。
完全に戸を開ききると戸が見えなくなるため、見た目がスッキリします。

引き戸は壁の後ろに隠れるため、引き戸の手前の壁は、家具を置くなど壁として有効利用できます。
しかし、レールなどが戸袋に隠れてしまうため、せまい空間の戸袋内にほこりや異物が入った場合は掃除しにくいという難点があります。

引き込み戸は、昔から雨戸で利用されてきました。
古い雨戸では、雨戸を収納する戸袋には鏡板と呼ばれる外側の鉄板の板と、内部にはべニア板が使用されていることが多くあります。
内部板が雨風や経年劣化による傷みによって壊れている場合もあり、その場合はべニアから鉄版でできた板に交換して耐久性を上げるのが良いでしょう。
もし内部に水が入っている場合、断熱材および部材の交換を検討します。

3:引き分け戸

引き分け戸は、2枚の戸を1本のレールに並べてはめて、左右に引き分けて開ける戸を指します。
扉の正面から見て中央部分から左右両側へ戸をスライドさせて、左右両側の壁もしくは両端の扉に引き分けて戸を開きます。
両方の戸を開くことができるので、中央に広く開口がとれます。

引き分け戸は、間口の中央から約半分の寸法が開口可能です。
扉の両側は袖壁となっているため開閉はできません。

4:片引き戸

片引き戸は、戸の片方が壁となり、戸を左右どちらかへ片方の壁に添わせてスライドする引き戸のことです。
スライドする戸は1枚の場合もありますが、2、3枚連動しているスライド戸もあります。

片引き戸には控え壁と言われる、引いた戸を収納する壁が必要なため、そのためのスペースが必要になります。
十分な場所が確保できないなど、場所によっては片引き戸の設置が難しい場合があります。
片側の壁は戸が見えないため、家具を置いて有効利用できます。

引き戸の設置方法の違い


引き戸のタイプとして、レールタイプと上吊りタイプがあります。

レールタイプは一般的な引き戸と言われるもので、床にレールやレールの溝があり、レールの上を滑らせて戸を開閉します。
襖や障子のような紙と細い木の枠と桟で構成された軽い建具であれば、敷居の上を滑らせて開閉できますが、全体が木でできた引き戸は重いため、敷居の上に付けられたレールの上をスムーズに滑らすために戸車が取り付けられている構造が多くなっています。

最近の住宅で人気の上吊りタイプは、上にレールなどを取り付け、戸を吊るして引き戸として開け閉めを行います。
上吊り戸は、天井や上の壁に取り付けられた枠の下側に取り付けたレールの中を、戸の上側に設置された吊り車と呼ばれる車輪が走って開閉します。

上吊りタイプの場合、戸の重量はすべて上のレールにかかります。
上だけで支えられている状態になるため、下の床には「振れ止め」の金具を付けて、戸が前後に振れないようにします。
戸の下部には、振れ止めが入るように溝が入っています。

引き戸の故障の原因3つ


これまで引き戸の種類とレールタイプや上吊りタイプの設置についてご紹介してきましたが、施工管理者として働くのであれば、引き戸の故障の原因もしっかりと把握しておきたいところです。

引き戸の動きが悪くなったり、開閉できなくなったりする場合は、主に次の3か所の故障によります。

・引き戸のレール部分の故障
・引き戸の戸車部分の故障
・住宅そのものの建付

ここからは、引き戸の主な故障原因を3つ紹介します。

1:引き戸のレール部分

敷居部分にあるレールの歪みが原因で戸の開閉がスムーズにできなくなることも多くあります。

引き戸は、左右に開閉する戸の下に敷居があり、上には鴨居によって挟まれて固定されています。
ふすまや障子のような軽い建材の場合は、敷居に溝を付けて滑らせる、もしくは敷居テープをはるだけということもあります。
木製の場合は、建具に重さがあるため、下の敷居部分には、レールが使われていて戸の滑りをスムーズにするサポートをしています。

敷居の上側に金属のレールが設置してあるタイプの引き戸のレールの場合は、横方向からの圧力や戸車との摩耗が主な原因です。
何かの力が加わり歪んでしまうこともあります。
レール固定にはビス打ちしているため、ビスが外れることによってレールの歪みが発生する場合もあります。

また、近年増えている敷居に溝を掘って埋め込んだ、へこんだレールを作っているタイプの引き戸では、埋め込み式のレールの中にほこりやゴミ、髪の毛などの細かい異物が入り込み巻き込んでしまうことで戸車が動かなくなり故障する場合もあります。
このレールは、長年の使用により溝が削れることはありますが、金属のレールのように歪みが生じることはありません。

2:引き戸の戸車部分

引き戸の上と下、それぞれについているタイヤのような部品を「戸車」といいます。
戸車は小さく繊細な部品なので、タイヤの軸が折れ曲がったり、異物を巻き込んだりすることで故障する場合があります。
また、経年劣化による摩耗でも戸車は故障します。

また、強い力で引き戸を引いた時に衝撃が加わり、戸車が外れてしまったり、破損したりすることもあります。
戸車があると、少しの力で引き戸の開け閉めができるので、高齢者や子どものいる家の引き戸にも使用されますが、繊細であるため壊れやすく注意が必要です。

3:住宅そのものの建付

引き戸のレールや戸車に問題がないのに、開閉できなくなる場合もあります。
住宅自体の建付が原因の場合は、引き戸以外にも様々な箇所に異常が発生するので注意が必要です。
住宅の建付けが悪くなる要因として、地震などの自然災害、手抜き工事、地盤の沈下などが考えられます。

特に原因となる建付の歪みがない場合であっても、住宅も月日が経つと細かな振動などによって建付に歪みが生じる可能性もあります。

引き戸を修理する際の注意点3つ


ドアの開閉用のスペースがいらず、開き具合を自在に調整できる引き戸は、様々な住宅で取り入れられています。
しかし、引き戸はレールや戸車など繊細で破損しやすい箇所があるという点には留意が必要です。

施工管理者として働く上で、引き戸の特徴をしっかりと把握しておくことが大切です。
引き戸は小さな戸車やレール部分の破損による故障が起きやすいことを念頭に置くようにしましょう。

ここからは、引き戸を修理する際の主な注意点を3つ紹介します。

1:レールに歪みがないかしっかり確認する

レールに歪みがないか確認する時は、必ず扉をレールから取り外すようにします。
扉を外してレールに歪みがないか確認し、扉を外した後のレールに異物が溜まっていないか、戸車の状態はどうなっているか、他の部品に破損はないかなどを調べます。外した扉の状態も確認します。

また、レールは床だけでなく天井にもありますので、天井のレールの確認を忘れないように注意が必要です。

2:戸車の交換は同じ部品を使う

レールにも問題がない場合、疑うのは戸車になります。
戸車の状態を確認するにも、戸を外し、平置きにして確認します。
上吊り戸の場合は、レールから外すには戸の下に支える台となるものを置くと作業がスムーズになります。
平置きする場合は、養生として敷物を用意します。

外した戸車を確認して、ほこりやごみは取り除き、スムーズに滑車するか確認します。
摩耗状態も見て劣化がないかを見ます。
ビズの緩みも考えられるので、その場合は閉めて取り付けるようにします。

戸車の摩耗や故障が原因の場合は、同じ部品を探して交換します。
似たようなサイズでも使える可能性はありますが、設計段階で予定しているパーツとは完成度に差が出てしまいます。

扉に記載もしくは引き戸を取り付けた際の工事の注文書などから、型番などを確認して同じものを用意します。
パーツが特定できない場合や取り寄せられない場合は、専門業者に同じものの作成を依頼するという選択肢もあります。

3:他の扉や壁の不調がないかも視野に入れる

建付が原因の場合は、レールだけの修理では不十分な場合もあります。

住宅事態の建付けが悪いために引き戸が故障している場合は、他の扉や壁など他の箇所にも不調が表れている可能性があります。
その場しのぎに引き戸の修理だけで済ませるのではなく、住宅全体の大掛かりな修理も視野に入れます。

他の扉や壁も不調がないか確認して、どのように修理をすべきか検討するとよいでしょう。

引き戸のメリット5つ

引き戸のメリット5つ


昔から日本では引き戸が使用されてきました。
引き戸は現在のような、洋風の建物に変わってきても日本の住宅に使用されています。

引き戸は開け閉めが容易で、通常の開きドアのようなノブを回す動作なく、戸を引くだけで開閉できます。
開閉動作時のデッドスペースが小さいため、開閉時のストレスが減り、スペースをとらないことは日本の住宅にとって大きなメリットです。
複数の戸が近くにある場合でも、開閉時にぶつかることがありません。

さらに引き戸は開放感があります。
開き具合を調整できるため、少しだけ開けることや、全開することができ、開けたままでも邪魔にならずに開放感を感じられます。
開けたままキープできるので換気の面でも優れています。

ここでは、引き戸のメリットを5つご紹介します。

1:開け閉めが容易

引き戸は開け閉めが容易で、通常の開きドアのようなノブを回して開閉する動作の必要がなく、単に戸の引手を持って引くだけで開閉ができます。
お年寄りや子どもがいる住宅やなど、将来のバリアフリーの観点でも引き戸にはメリットがあります。

従来の引き戸は、そのまま溝を滑らせる構造でしたが、近年は扉の内側に溝を入れ、戸車をはめ込んでいる場合も多く、少ない力で開閉できるようになっています。
上吊りの引き戸は、ソフトクローズといった戸を閉める際に少ない力でアシストする引戸金物がついている場合もあります。
近代の住宅に合わせて、引き戸は進化しており、より使いやすいものを選べるようになってきています。

逆に引き戸の場合、戸が軽くなりすぎて、滑りすぎにより困る事態になる可能性もあります。

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滑りすぎによって、力を加えていないつもりでも勢いがついて戸が開閉されるため、子どもなどが開けた時に少しの力で大きな音を出して戸が開く、そのため指を挟んでしまう事故が心配になることもありますし、勢い良すぎて部品を壊してしまうのではないかと心配するケースもあります。
開閉のスムーズさは個人の見解によるものも多いですが、不快に感じる重さ、開閉のスピードも重要なところです。

メーカーが出している引き戸のアウトセットには、速度調整のビスが用意されていて、調整することによって戸の開閉の速さを調整可能な場合もあります。
引き戸がぐらついていないか、重さは適切な状態になっているかも確認してください。

2:スペースをとらない

引き戸は、開閉動作時のデッドスペースが小さいため、開く方向にスペースをとる必要がありません。
デッドスペースをできるだけ減らせるということは、日本の住宅にとっては大きなメリットです。

複数の戸が近くにある場合でも、開閉時にぶつかることないため、たとえば複数の扉が近くにある場合、それぞれの扉の開閉を気にせずに設計ができます。
また、スペースをとらないため戸の近くに家具を配置できるというメリットもあります。

3:開放感が出る

引き戸は開き具合を調整できるため、少しだけ開けることも、全開にすることもできます。
開けたままで開き具合が固定されているため、前後に開く開き戸のように、途中で閉まることもないため邪魔にならず、開放感を感じられます。
特に引き分け戸などは開口が広いため、引き戸を開いて両側に寄せ、戸の中央を開けることで開放感が出ます。

また、少しだけ開けた状態にできるということは、換気の面でも優れています。

4:開き具合を調整できる

引き戸は、開き具合を調整できることもメリットの1つです。
赤ちゃんが隣の部屋に寝ていて少しだけ開けて様子を見たい時、空気の入れ替えのために換気したい時など、開き具合を調整して開閉できます。
完全に開けると開放感が出るため、部屋が広く感じられます。

前後の開き戸の場合は、途中で開いたままにするには、何かで止めておく必要があります。
開き戸は風や空気の流れ、振動や傾きなどで扉が開閉するため、扉の下側にストッパーを入れて調整するなど固定の道具が必要です。
その点、引き戸は道具を使うことなく自由に好きな場所で開けたままの状態にできるのはメリットだと言えます。

5:扉同士がぶつからない

洋風建築では扉が前後に開閉するのが一般的ですが、日本の住宅では十分なスペースがとれない可能性が多くあります。
もし開閉する扉の場合、壁の位置や戸を開けるスペースの確保を確認して扉を内開きにするか、外開きにするか決める必要があります。

また、開き戸同士が近い位置に配置されている場合、どちらかを内開き、片方は外開きなどの工夫によって、接触しないように設計されています。
引き戸であれば前後の開閉ではないため、複数の戸が近くにある場合でも、開閉時に扉同士がぶつかる心配がありません。
複数の扉を配置する場合であっても、開閉時の設計は不要です。

引き戸のデメリット3つ


引き戸は開き具合の調整が自由にできる、開き戸に必要なスペースを考える必要がないなどのメリットを紹介しました。
ここからは、引き戸のデメリットを3つ挙げたていきます。

主に考えられるデメリットとして、引き代が必要、引き代に壁を利用する設備を設置できない、気密性が低めという3つの内容が挙げられます。
スペースの問題として引き戸には必ず引き代、つまり戸と同等の幅の壁が必要です。

1:引き代が必要

引き戸には、必ず引き代が必要になります。
引き代とは、引き戸と同じ幅の壁のことです。
引き戸を開けた時に、引き戸を収納するだけのスペースがあることが引き戸設置の条件になります。

引き代は片引き戸の場合は、引き戸をしまう場所になってしまうため家具などのものが置けなくなります。
引き戸をしまう引き代の裏側の壁にはものを置くことが可能になるため、壁側と引き戸を右側か左側どちらに置くべきか施工の段階でよく確認することが大事です。
設置した後に、壁を反対側にするべきだったと施主の方が後悔してしまうケースもあります。

2:引き代に壁を利用する設備を設置できない

扉が壁の中にすっぽりと納まる戸袋のある引き込み戸の場合、その収納される壁には、コンセントやスイッチ、インターフォンモニターなど設備の設置ができなくなります。
よって、引き戸は開き戸に比べて、隣の壁に関しての設計で制限がかかってしまいます。

引き戸の設置をする際に、引き代とは別の壁に設備やコンセントの設置をしても問題ないかなど、考えておかなくてはならない点があります。

3:気密性が低め

引き戸のデメリットとして、気密性が低いことが考えられます。
特に上吊りタイプは、下が浮いている状態なので、音や空気がもれやすくなることが考えられます。
たとえばトイレの音、子どもの遊んでいる声、音楽の音など音が気になる場合は引き戸は向かないでしょう。

また、寒い廊下や冬のお風呂など、冷たい空気がもれるのを気にする場合は、気密性が問題ないか検討し、メリットとデメリットを考えて場合によっては開き戸が向いている場合もあります。

引き戸の設置に向いている場所8選


引き戸は住宅のあらゆる場所で設置が可能ですが、一定のスペースを確保する必要もあります。
開き戸のデメリットとして扉同士が近い場所は、お互いの戸が当たる可能性があるため引き戸にメリットがあるとお伝えしました。
このような場所や、何度も開閉すると音や騒音によって迷惑がかかる、もしくは開閉時に戸の後ろに人がいないか確認する必要があるような人の出入りが多い場所、というのは引き戸が適しているといえます。

また、従来の住宅で元々使用されていた玄関や収納スペースも引き戸の設置が向いていますし、脱衣所や水回りなど湿気の多い場所を換気するためにも引き戸は最適です。

最近では、トイレや子ども部屋などで引き戸はバリアフリーや安全面の観点で採用されることが多くなりました。
何か緊急の事故時に、開き戸ではものがひっかかかり開けることができず閉じ込められる、といった懸念もありますが、引き戸ではものによる干渉の恐れは低いと言えるため、安全面でも引き戸は適しています。

ここでは、引き戸の設置に向いている場所として、8か所詳しくご紹介します。

1:扉同士が近い場所

日本の住宅の多くは、キッチン、お風呂、トイレなどの水回り設備のある場所は近い位置に配置され、水回りのすぐ側にはリビングなどの部屋が配置されていることが多くあります。
また、それぞれの部屋を隔てる扉は、廊下を隔てて近い場所に設置されていることが多くあります。

複数の開き戸の設置は、すべて外開きにすると扉同士がぶつかる心配があるため、一部を内開きにするなど工夫が必要です。
外開きにする際は、開いた側は必ず壁でなければならないため、開き戸を左右どちらに開くようにするか考慮する必要があります。
また、後ろに人がいないか気にしながら戸を開閉しなければなりません。

その点引き戸は、戸を付けたい場所に設置でき、近くの扉との接触を考える必要がありません。

複数の扉が近い場所に配置されている場所は、引き戸のメリットが活かされるでしょう。

2:玄関

従来の住宅では、玄関はアルミや木、ガラスなどで構成された引き戸の玄関が多く見られました。
洋風住宅の普及により開き戸の玄関が増えましたが、近年は引き戸の玄関のメリットが多いため見直されています。

引き戸の開閉は、戸を横にスライドするだけなので、玄関前のアプローチスペースがとりづらい住宅にも適しています。

たとえば、小さいお子さんのベビーカーを入れる場合でもスムーズに出入りできます。
大きな荷物を持っていても、途中で閉まることがないため出し入れが簡単です。
戸を開けたままキープできるため、玄関前の郵便ポストに手紙を取りに出る際や、宅配便の受け取り時も戸を押さえる必要がありません。

換気や通気をしたい時も、ストッパーや手で止める必要がないので好きなように隙間を開けられます。
小さな力で開閉できるので、小さいお子さんやお年寄り、車いすの利用でも簡単に戸を操作できます。

断熱性や気密性が心配な場合も、最近の引戸の素材は、断熱性能を高める、複層ガラスといった仕様もあるため、断熱性を上げて結露の抑制にも効果があるでしょう。

3:人の出入りが多い場所

人の出入りが激しい場合、人が行き来するたびに扉の開閉回数は多くなります。
開き戸であれば、開閉のたびに人とぶつからないかを心配することも出てきます。
引き戸であれば開けたままにでき、開閉の煩わしさもなく、開閉時の気になる雑音もないため快適に過ごせます。

引き戸は開き戸と比べても開閉時の音は静かなため、開閉のたびに注目を浴びることもなく他の人の邪魔になりません。

また扉を開けておくことの利点として、空間が広く感じられ、多くの人がいても圧迫感を感じにくくなります。
病院や学校など多くの人が集まる場所や、家族の多い住宅でも引き戸を採用するとよいでしょう。

4:トイレ

公共施設のトイレでも見られるように、バリアフリーの観点で引き戸が採用されています。
引き戸は、扉の前後方向の開け閉めがないため、車椅子に乗っていても開きやすくなります。
勝手に閉まることもなく、少しずつ開いて途中で止めることも可能です。

引き戸は床の段差が少なく簡単に開閉できるため、お年寄りのいる住宅などバリアフリーを考える住宅にも向いています。
また、個室内で人が倒れたりドアの前にものが倒れたりした際に、閉じ込められる事故を防げるなど安全確保の面でも有効です。

5:脱衣所や水回り

引き戸は通気性がいいため、湿気が多くこもりやすい脱衣所や水回りなど、風通しをよくしたい部屋に向いています。
湯気のこもりや湿気を逃がす効果があるので、カビや結露の発生を抑えてくれます。

住宅の脱衣所は、着替えやタオルなどで場所がないことも多く、内開きの扉では脱衣所の中に戸を開くスペースに家具やものを置けなくなります。
引き戸にすることで、通気性とスペースを確保できますし、戸袋のある壁を有効利用して脱衣所に家具を配置することも可能です。

6:子ども部屋

子どもが小さい場合は、常に目が離せず安全を確認しなければなりません。
子ども部屋を引き戸にして、戸を適度に開けられることで、たとえば寝ている子どもの様子をうかがえて、何かあれば気づけるのですぐ駆けつけることができます。

また、少し大きい年齢になった時は、戸を閉めて子どものプライベートを尊重できます。
気配を感じ、見守るようにちょうどいい距離感で子どもの様子を感じられるので、引き戸を子ども部屋に設置するのはちょうど良いでしょう。

ソフトクローズ機能がついている引き戸は、戸が重いため子どもが手を挟んでケガをすることもありません。

7:バリアフリーにしたい場所

引き戸は、扉の前後方向の開け閉めがなく、段差が少ないのが特徴です。
車いすを利用する場合やお年寄りがいる家であれば、引き戸タイプの方が安全でしょう。
上吊りタイプにすれば完全に床をフラットにできます。

また、引き戸は開閉の空き具合を調整でき、途中で開けた状態を保持するのも簡単です。
引き戸を開いて中に入った際、そのままの姿勢で戸を閉められます。
開き戸は、開いた戸のスペースを確保して閉める必要があるので、車いすなどの移動には引き戸が最適です。

8:収納スペース

従来の住宅の押し入れには、引き戸が使われてきました。
戸を手前に開閉する必要がなく、開けるたびに手前に置いている家具などを移動させる必要がありません。
押し入れのような広いスペースが確保できれば、引き戸は収納スペースの戸として最適です。

また、部屋の一角にウォークインクローゼットやパントリーを配置している場合、隠れるならば扉を付けなくてもよいですが、扉を付ける場合は引き戸が適しています。

何度も出入りして往復する場所なので、開き戸は開け閉めが面倒になり、開きっぱなしになることもあります。
引き戸であれば戸を開けたままでも邪魔にならず、開け閉めが容易なため出入りしやすくなります。

引き戸の特徴や注意点をおさえよう


ドアの開閉用のスペースを確保する必要がなく、開き具合も自在に調節できる引き戸は、様々な住宅で取り入れられています。
スペースの使い方の自由度が上がる引き戸は、住宅の設計に欠かせません。

引き戸は主に4種類あります。
引き違い戸、引き込み戸、引き分け戸、片引き戸です。
引き戸の設置するタイプとして、一般的な引き戸であるレールタイプと最近の住宅で人気の上吊りタイプがあります。

引き戸の動きが悪くなったり、開閉できなくなったりする故障の特定として、小さな戸車やレール部分の破損による故障が起きやすいということを、念頭に置くようにしましょう。
修理する際に留意する点もご紹介しました。

重たい扉を開けたり閉めたりするのは、何度も繰り返し行う動作なので破損する可能性は高く、これからの住宅環境においても今後も採用されることが多いでしょう。

そのため施工管理者としても、引き戸の特徴や取り扱いの注意点はしっかり把握しておくことが大切です。

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