保留床とは?保留床が生まれる市街地再開発事業の流れと役割を担う関係者3つ
目次
保留床とは?
保留床(ほりゅうしょう)とは、市街地再開発事業で権利者に与えられる権利に含まれない敷地や床を指します。
市街地再開発事業とは都市計画によって定められている市街地開発事業で、主に市街地の合理的利用や都市機能の更新などを目的として行われるものです。
この市街地再開発事業ではビルの高層化などによって新しく生まれた床が、権利者に与えられずに残されることがあります。この記事では保留床についてご紹介していきます。
市街地再開発事業で生まれる床
保留床とは、市街地再開発事業で生まれる敷地や床です。
市街地再開発事業では事業が開始される以前からの権利者について、原則権利に応じて建築された建物の敷地や床が与えられます。そして、このことを「権利変換」と呼びます。
しかし新しい建築物のレイアウトなどによって保留床が生まれた場合、権利変換後に事業施行者に帰属されることになるため、市街地再開発事業によって新しく生まれた不動産価値の形だと言えます。
保留床は権利床以外の部分
保留床は権利の所有者に与えられる権利床以外の部分を指します。
一般的に、第一種市街地再開発事業では事業開始前からの権利者に対して、新しく建設された建築物の中からその権利に応じた「権利床」と呼ばれる敷地や床を与えることになります。
保留床は権利者に与えられない分の敷地や床を指すことから、権利床以外の部分が保留床であると言えるでしょう。
保留床を生み出す市街地再開発事業の関係者3
保留床を生み出す市街地再開発事業にはどのような関係者が存在するのでしょうか。
市街地再開発事業において保留床が生まれるのは、再開発が行われる土地を元々保有していた権利者と、実際に開発を行うデベロッパーといった複数の関係者が存在することが理由にあります。
ここでは保留床を生み出す市街地再開発事業の関係者3選をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
保留床を生み出す事業関係者1:土地を提供し権利床を取得する地権者
保留床を生み出す市街地再開発事業には、もともとその土地を保有しており、開発のために提供した地権者が存在します。
市街地再開発事業を行う土地を所有しており、開発などに利用する権利を持つ所有者のことを地権者と呼ぶのが一般的です。
市街地再開発事業では地権者が保有している土地を提供し、デベロッパーが開発を行うことになります。また、建築物が完成した後には、その権利に応じて地権者に権利床が与えられます。
保留床を生み出す事業関係者2:資金を提供し保留床を取得するデベロッパー
保留床を生み出す市街地再開発事業には、開発のための資金提供を行うデベロッパーが存在します。
デベロッパーは不動産開発業者のことで、市街地再開発事業によってビルや宅地造成などを行います。市街地再開発事業において、デベロッパーは再開発ビル建設のために提供した資金に応じて保留床を得ることが可能です。
また、一般的にデベロッパーが取得した保留床は売却し、事業資金に充填することになります。
保留床を生み出す事業関係者3:交付金などで支援する地方公共団体
保留床を生み出す市街地再開発事業には、市街地再開発事業を支援する地方公共団体が存在します。
市街地再開発事業は公共性の高い事業となっているため、地方公共団体が取り組みを支える仕組みです。地方公共団体は市街地再開発事業が正しく実施されるように、指導、監督を行います。
また、開発に必要な事業費についても交付金などを支給することで資金面からも支援する役割があります。
市街地再開発事業で保留床が生まれる仕組み
保留床は再開発ビルを建設することで土地に新しい敷地が増えることから生まれます。
市街地再開発事業ではデベロッパーは地権者が所有する土地を利用し、再開発区域内の道路や公園などを整備するだけでなく、再開発ビルも建設しなければなりません。
そのため、再開発区域に開発前の面積を上回る敷地が生まれ、地権者に与えられる床とデベロッパーに与えられる保留床にわかれることになります。
保留床が生まれる市街地再開発事業の流れ5つ
保留床が生まれる市街地再開発事業の流れをご紹介します。
市街地再開発事業とは、道路や公園といった公共施設などの基盤を整備する公共性の高い都市計画事業です。それでは、保留床を生み出す市街地再開発事業とはどのような流れで実施されるのでしょうか。
ここでは保留床が生まれる市街地再開発事業の流れ5つをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
保留床が生まれる事業の流れ1:街のビジョンを考える
市街地再開発事業では、まず総合的な街のビジョンを考えるところから始まります。
市街地再開発事業はまちづくりの一環として実施される、非常に公共性が高い事業です。そのため、市街地再開発によってどのようなまちづくりを進めるのかを検討してから、総合的なまちづくりのビジョンを描く必要があります。
保留床が生まれる事業の流れ2:事業計画の策定
市街地再開発事業では準備検討段階として事業計画の選定を行います。
具体的な街のビジョンを検討し、まちづくりの発意が行われたら、地方公共団体によって基本構想の選定などが行われ、さらに再開発に関する仕組みを学ぶための勉強会や協議会などが発足され、開発を行う地区に適切な事業計画の策定を行います。
保留床が生まれる事業の流れ3:準備組合の設立
市街地再開発事業では準備検討段階の最後に準備組合を設立します。
準備組合とは市街地再開発事業における具体的な検討を行うための組織です。準備組合では再開発事業のための資金計画や施設計画、権利変換モデルなどを検討します。
また、加えて土地の権利者との合計形成も行います。
保留床が生まれる事業の流れ4:事業の実施
市街地再開発事業では、実際に事業を実施します。
事業計画が決定し、基本設計や資金計画がまとまったら、事業計画について知事などから認可を受けなければなりません。さらに権利変換計画について知事から認可を受けると権利変換処分が行われ、建設工事に着手することができるようになります。
出典:国土交通省ホームページ
保留床が生まれる事業の流れ5:建物の完成・運営管理
市街地再開発事業では、建物が完成すれば管理運営が行われるようになります。
建設工事が完了すると再開発事業のために設立された組合については解散となり、権利者の権利価額などを整理し、事業自体は完了です。
また、その後は区分所有建物となる再開発ビルの管理運営を行う必要があるため、所有者は管理組合を設立して運営していくことになります。
保留床は売却して事業資金に充てられる
一般的にデベロッパーは取得した保留床を売却し、事業資金に充てることになります。
デベロッパーは市街地再開発事業で再開発ビルを建設する資金を提供する代わりに、資金額に応じた面積の保留床を取得することになります。
また、保留床は売却させることが一般的ですが、保留床には市街地再開発事業に掛かった事業費を賄うという目的があり、さらに事業推進を安定的に進める障害にならない価格を設定することが必要です。
保留床の処分は公募
保留床は権利変換後、公募によって売却されます。
再開発ビルの保留床は公募によって分譲が行われ、公募時点での時価で売却されることが想定されています。ただし、価格の設定については明確の取り決めはありません。
また、公募や選定時期に関しては特定事業参加者制度の種類によって事業計画認可前、事業計画認可後、権利変換計画認可後にわかれます。
保留床はデベロッパーが取得・処分して事業資金に充てる建物の権利分
市街地再開発事業は公共性の高い事業となっていますが、デベロッパーは再開発ビルの建設によって生まれた保留床を事業資金に補填することができます。
ぜひこの記事でご紹介した保留床に関する概要や市街地再開発事業の関係者、保留床が生まれる市街地再開発事業の流れなどを参考に、市街地再開発事業によって生まれる保留床について理解を深めてみてはいかがでしょうか。
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