山留め工事の目的とは?山留め工事の工法とそれぞれの特徴8つを解説
山留め工事とは?
山留め工事とは、地下の基礎工事で周辺の地盤や建物が崩れないように周りの地面を固めたり、支えを作る工事のことです。
山留め工事は地下工事を行う際には必ず必要になる工事で、その種類も多いです。また、他の工事と違って土の中には水分も多く含まれており、不確定な要素が多いことから、計画や施工は慎重に進めることが重要です。
山留め工事の目的
山留め工事は掘削工事を行う際に側面を保護することで、周辺の地盤が崩れないようにする目的があります。
砂場などで地面を掘ると、掘っているうちに周りの砂が崩れてきて掘った穴が埋まってしまいますが、掘削工事でも同じことが発生します。
また、長い距離を掘る場合や地面を深く掘る場合ほど、周囲の土壌が崩落する可能性は高くなります。そのため、山留め工事を行って崩れないようにする必要があります。
山留め工事の工法と特徴8つ
山留め工事の工法にはさまざまな種類があります。
山留め工事は非常に重要な工事のため、その種類も多いです。また、山留め工事を行う場合は費用や時間がかかるため、現場のさまざまな条件によって最適な工法が選択されることになります。
ここでは山留め工事の工法と特徴8つをご紹介しますので、どのような種類や特徴があるのか参考にしてみてはいかがでしょうか。
山留め工事の工法と特徴1:親杭・横矢板工法
親杭・横矢板工法とは一般的な山留め工事の工法です。
親杭・横矢板工法は、親杭として地中にH型鋼やレールなどを80cmから150cmほどの間隔で埋め込み、掘削にともなってその間に横矢板をはめ込んでいく工法です。他の工法と比較して費用が安く、深い掘削にも対応できます。
ただし、地質がもろい場合は土砂の圧力が強い場所には向いていません。また、施工者の技術によって差が出ます。
山留め工事の工法と特徴2:シートパイル工法
シートパイル工法とは軟弱地盤に適した工事の工法です。
シートパイル工法は鋼矢板工法とも呼ばれる工法で、コの字型の鉄製の板を連続してかみ合わせながら地中に埋め込むことで土砂の崩落を食い止めます。
シートパイルはお互いにかみ合う構造になっているため、地盤がもろい現場や湧水などが出る現場で使用されるケースが多いです。深い掘削にも対応できますが、技術力が必要な工法で、硬い地盤には打ち込めません。
山留め工事の工法と特徴3:地中連続壁工法
地中連続壁工法とは地盤がもろく湧水が出るような現場で使用される山留め工事の工法です。
地中連続壁工法はSMW工法とも呼ばれる工法で、掘削壁面に安定液を使って崩落を防ぎながら、地中に壁体を作っていく方法です。
そのため掘削面が非常に頑丈になり、重機を使ってどんどん掘り進めていくことも可能です。高い安全性が確保できますが、その分、山留めを作るのに時間と費用がかかります。
山留め工事の工法と特徴4:グランドアンカー工法
グランドアンカー工法とは斜面安定などの目的でも使用される山留め工事の工法です。
地中に土留壁を打ち、掘削外周にグランドアンカーを設けることで引抜抵抗をもたせ、安定させるというものです。グランドアンカーの段数は必要に応じて決まります。
グランドアンカー工法は支保工が不要なので施工能率が高いですが、アースアンカーを設ける必要があるためスペースに制限があります。
山留め工事の工法と特徴5:水平切梁工法
水平切梁工法とは山留壁オープンカット工法でよく使用される山留め工事の工法です。
切梁や腹起、火打などの支保工によって、山留め壁の側圧を支えます。また、水平切梁工法の中には井形式、火打式、集中切梁式といった方式があり、井形式が一般的な水平切梁工法となっています。
土圧を全体で支えることから安定感があり、実績も豊富ですが、作業空間に制限があるため掘削重機の作業も制限されます。
山留め工事の工法と特徴6:鋼矢板工法
鋼矢板工法とは前述のシートパイル工法のことです。
鋼管に継手を溶接して繋いだシートパイルのことを鋼矢板とも呼びます。前述のとおり、コの字型の鋼矢板を連続してかみ合わせていくことで打設し、内部を重機などで掘削していく方法です。
鋼矢板は高い耐久性を持っているため、使い捨てではなく転用することができます。
山留め工事の工法と特徴7:鋼管矢板工法
鋼管矢板工法とは鋼管に継手を溶接してつないだ鋼管矢板を使用する工法です。
湾岸や河川、土地土木、橋梁など幅広い現場で使用されている工法で、高い断面性能や曲げ剛性を持っています。
特に円形の井筒につないで閉合した鋼管矢板基礎は、基礎杭と仮り締め切り用の壁体の両方を兼ね備えているため、非常に経済的で合理的な施工が可能になります。
山留め工事の工法と特徴8:アイランド工法
アイランド工法とは中央部に島のような部分を施工する工法です。
山留め壁の内側に斜面を残したまま掘削を行い、先に掘削した中央に島のような構造物を作り、そこから山留め壁の方へ切梁を設置して周囲の残っていた土を掘削します。最後に中央部分に島が残ることからアイランド工法と呼ばれています。
アイランド工法は浅く広い掘削工事に便利で、材料費や施工費も安いです。一方、空間が狭いため作業効率は高くはありません。
山留め工事を選ぶときのポイント5つ
山留め工事の種類はどのように選べば良いのでしょうか。
ここまでご紹介したように、山留め工事には多くの種類があるため、現場の土質や地下水位、予算などのさまざまな条件を考慮して工事方法を選択する必要があります。
ここでは山留め工事を選ぶときのポイント5つをご紹介しますので、どのようなポイントがあるのか参考にしてみてはいかがでしょうか。
山留め工事を選ぶときのポイント1:地質の条件
山留め工事を選ぶ場合、地質の条件が重要になります。
地質も現場によってさまざまで、粘り気が強い粘度のような土の場合もあれば、崩れやすい砂状の土質の現場もあります。砂のよう崩れやすい地質であれば山留めも特に強固なものを選ぶ必要があるため、地質条件は最重要だと言えます。
また、地盤に地下水が含まれているかどうかや掘削規模も合わせてチェックします。
山留め工事を選ぶときのポイント2:環境の条件
山留め工事を選ぶ場合、周囲の環境条件を調査しましょう。
環境の条件とは、地下埋設物調査、近接構造物調査、施行条件の調査の3つです。これらをしっかりと調査しておかないと、地下に打ち込みを行った際に水道管などを破損してしまい、トラブルを発生させてしまいかねません。
環境の調査には、近隣建造物の台帳や構造図のチェックや、現地調査などを行います。
山留め工事を選ぶときのポイント3:期間
山留め工事を選ぶ場合、工事の期間を調査しましょう。
山留めの種類によっては、すぐに施工できるものもあれば作るのに時間がかかるものもあります。また、山留めや設置だけでなく撤去も行う必要がありますが、設置に時間がかかる山留めは撤去にも時間がかかります。
そのため、工期を考慮して期間内に問題なく設置と撤去が可能な山留めの種類を選ぶことになります。
山留め工事を選ぶときのポイント4:剛性
山留め工事を選ぶ場合、剛性を調査しましょう。
山留めにどのくらいの剛性が必要になるのかも事前に計算する必要があります。山留めにかかる負荷は土の量によりますが、さらに地質によっても変わってきます。
水分量が多い土はより重たくなるため、雨なども考慮して負荷に耐えられる山留めを作る必要があります。
山留め工事を選ぶときのポイント5:騒音
山留め工事を選ぶ場合、騒音を調査しましょう。
山留めを作る場合、地面を掘って杭を打ち込んだり、壁の構築をしたりすることになるため、振動や騒音が発生します。そのため、周りが住宅地であればできるだけ振動や騒音の少ない種類を選択する必要があります。
騒音などが迷惑としてクレームが来ることもあるため、十分考慮するようにしましょう。
山留めが必要ないときに行うオープンカット工法
山留めが必要ない場合にはオープンカット工法と呼ばれる工法が用いられます。
オープンカット工法も地面の掘削を行う工法ですが、土壌の安定勾配を利用することで山留めを設置せずに掘削を進めていく工法になります。
ここでは最後に、山留めが必要ないときに行うオープンカット工法2種類についてそれぞれご紹介します。
地山自立掘削工法
地山自立掘削工法とは山留め壁を設けずに硬い地盤を掘削していく工法です。
地山とは「硬い地盤」を意味しており、硬い地盤や岩盤などは掘削しても土の地面のように崩壊することはありません。そのため、地山自立掘削工法では硬い地面を自立可能な深さまで掘削します。
掘削した地盤が自立することを前提とする工法です。
法付けオープンカット工法
法付けオープンカット工法とは山留め壁を設けず、角度をつけて地盤を掘削する工法です。
法付オープンカット工法の「法」とは「斜面」を意味する言葉で、法面(斜面)を付けて大きく地盤を掘削していきます。そのため、法付けオープンカット工法で掘削した場所は斜面が段差になる形になっています。
一般的に「オープンカット」と言えば法付オープンカット工法を指します。
山留め工事は地盤や建物を守る工事
地下工事の際には山留め工事を行うことで、地盤を掘削しても周辺の地盤や建物などを守ることができます。
山留め工事の種類も多いため、現場の環境や予算、工期などに合わせて適した種類を選択する必要があります。
ぜひ、この記事でご紹介した山留め工事の工法と特徴や山留め工事を選ぶときのポイント、山留めが必要ないときに行うオープンカット工法などを参考に、どのような山留め工事があるのか参考にしてみてはいかがでしょうか。
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