完成工事高とは?完成工事原価との違いや完成工事高を把握する3つの統計を紹介
目次
完成工事高とは
完成工事高とは、完成した建設工事の売上高、収益のことです。一般の業種では売上高にあたる部分を建設業では完成工事高と呼びます。完成工事高と売上高の違いは、呼び名が違うだけであり、それ以外に大きな違いはありません。
建設業の経理においては、会計の勘定科目が一般の業種とは違う呼び名になっているものがあります。それは、一般の商品売買と違い、工期が数年に及んだ場合、1年ごとの会計が難しいためです。
完成工事原価との違い
完成工事高は、その本業によって得た収益のことです。一方、完成工事原価は、一般の業種で言うところの製造原価に当たる科目です。計上した完成工事高に対応する工事原価が完成工事原価に当たります。
完成工事原価は、材料費・労務費・経費・外注費の4つで構成されています。
完成工事高の仕訳について
建設業における売上のことを完成工事高と呼びます。この完成工事高の仕訳について説明します。
建設工事において、売上の計上基準は2つあります。工事完成基準、工事進行基準です。工事完成基準は、売上を工事が完成し引き渡したタイミングで売上を計上します。一方、工事進行基準は、工事の進捗状況に応じて収益を見積もりし売上に計上します。
工事完成基準で説明すると、工事が完成し、引き渡しが完了した時点でその工事の収益を完成工事高として処理をします。そして工事にかかった原価を完成工事原価として処理するのです。
具体例
具体例として、建設工事を100万円で受注し工事の原価総額が60万円だった場合を例にあげます。工事完成基準を採用し、代金は後払いとします。
工事が完了し、100万円の代金を受け取った場合、その代金は完成工事高として計上します。そして工事の収益に対してかかった60万円の原価を、完成工事原価として計上します。
完成工事高を把握する3つの統計
完成工事高は、建設工事に対する売上高のことです。
この完成工事高は、建設業関係の統計調査に使われることがあります。それは、調査によって建設工事や建設業がどういう状況にあるかを明らかにして、様々な施策を行う際の指標にするためです。
では、主な統計調査を3つご紹介します。
完成工事高を把握する統計1:建設工事施工統計調査
建設工事施工統計調査は、建設業者が行った建設工事の完成工事高等を調査することにより、建設業の実態や建設活動の内容を明らかにするものです。経済政策や建設行政等に役立てることを目的にしています。
この統計調査は、全国約47万の建設業許可業者の中から、約11万業者を抽出し毎年行っています。
完成工事高を把握する統計2:建設工事受注動態統計調査
建設工事受注動態統計調査とは、全国1万2千の建設業者を対象とした、月次の調査です。
建設業者がどれだけ建設工事を受注しているか、公共機関や民間からの受注工事を把握することによって、各種の経済施策・社会施策のための基礎資料を作り、企業が経営方針策定などを行う際の参考資料を提供することを目的としています。
調査の結果は国土交通白書などで分析・評価され、様々な建設産業行政の施策を行う際の基礎データ、国の景況判断の指標として利用されています。
完成工事高を把握する統計3:建設総合統計
建設総合統計とは、出来高ベースで国内の建設活動を把握することを目的とした、加工統計です。
建築着工統計調査、そして建設工事受注動態統計調査から得られた工事費額を着工ベースの金額としてとらえて、これらを工事の進捗に合わせた毎月の出来高に展開し、月ごとの建設工事出来高として推計しています。
建設総合統計は、国内の建設工事の出来高を月別・地域別・発注者別・工事種類別等に推計して発表しています。
完成工事高以外にもある建設業会計特有の勘定科目4選
建設業界においては、一般の商品売買とは違う勘定科目を使用しています。それは、普通の商品売買と違い建設業では工事が数年かかることもあり、1年ごとにお金の動きを会計処理するのが難しいからです。
完成工事高、完成工事原価以外にも、一般の会計にはない科目があります。4つご紹介しますので、それぞれどんな意味があるのか押さえておきましょう。
完成工事高以外の特有勘定科目1:完成工事未収入金
完成工事未収入金とは、完成工事高として計上した工事の請負代金(売上高)のうち、受注先から回収していない資産勘定のことを言います。一般の業種で言うところの売掛金に該当するものです。
決算期の後1年以内に回収する予定のものだけが計上され、破産債権や再生債権など、決算期の後1年以内の回収が無理だと明らかなものは、投資その他の資産として記載します。
完成工事未収入金には、完成後に引渡しをした工事に対しての未収入金と、工事進行基準を採用した場合に未収入金として計算されたものの2つの意味があります。
また完成工事未収入金は、建設業界で経営状況分析を行う際、企業の流動性を把握するための3つの指標の1つとして用いられています。
完成工事高以外の特有勘定科目2:未成工事受入金
工事を請け負う際、着工から完成、引き渡しまでに長い期間がかかる場合があります。その際、建設工事のための資金を用意する必要があり、請負代金の一部を事前に受け取ることがあります。
この、工事の完成前に受け取った代金を未成工事受入金として計上します。この未成工事支出金は、貸借対照表上では流動負債となります。
工事が完成し引き渡しをすると、この未成工事受入金は完成工事高へ振り替えられます。
完成工事高以外の特有勘定科目3:未成工事支出金
未成工事支出金とは、まだ完成していない建設工事に対する工事原価のことです。仕掛品の一種で、貸借対照表上では流動資産の区分になります。
1年以内に工事が終わるような場合は完成工事基準を採用することが多いですが、大規模な工事では数年単位で工事を行う場合もあり、請負金額も高額になります。
そのような場合、工事が完成し売上計上ができるまで、工事に関する支出は未成工事支出金という扱いになります。未成工事支出金は、完成工事高が計上されるタイミングで完成工事原価へ振り替えられます。
完成工事高以外の特有勘定科目4:工事未払金
工事未払金とは、工事を行う際に材料を購入したり下請に作業を外注したりした際に、購入先や外注先に支払う代金のうち未払いの金額のことを言います。
一般の商品売買においては、商品の仕入れなどの取引で発生する買掛金に該当します。貸借対照表上では、流動負債の区分となります。
完成工事高について理解しよう
建設業界では、一般の商品売買とは異なる建設業会計が採用されています。それは、建設業においては工事が数年に及ぶこともあり、1年ごとの会計が難しいという事情があるからです。
完成工事高は一般の商品売買で言うところの売上高のことです。完成工事高を計上する基準も、工事が完成した日に処理する方法と、工事の完成する度合いに応じて処理する方法があります。
完成工事高など勘定科目について理解し、どのような時に用いるのかをしっかり押さえておきましょう。
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