水中コンクリートとは?3つの種類や主に用いられる施工方法を紹介
目次
水中コンクリートとは
水中コンクリートとは、海水中や淡水及び安定した液中に打設するコンクリートです。
河川や海洋など、水面下の広い空間での作業と場所打ち杭または連続地中壁の施工などのような狭い場所への打設があります。
通常の打設よりも強度低下や材料分離の可能性が高いため、水中コンクリート以外の選択肢がない場合に限り行う施工方法です。
水中コンクリートの種類3つ
水中コンクリートの種類は、減水剤を使用した一般的なタイプと水中不分離混和剤タイプ、特定用途用です。
分離を防止するために特殊な混和剤を使用したタイプは、水中不分離コンクリートとも呼ばれます。水中での施工を目的に開発され、粘性を高め、水中でも材料が分離しないコンクリートです。
特定用途用は、場所打ち杭など連続地中壁用のものを指します。
1:減水剤を添加したコンクリート
コンクリートに減水剤を添加すると、単位水量を少なくして、粘性を高めます。
コンクリートは化学混和剤を使用して濃度を濃くし、緻密性と強度を上げます。化学混和剤に減水剤を使用すると、同じ濃さで単位セメント量を減らすことが可能です。
一般の水中コンクリートは単位セメント量が370kg/m³以上、水セメント比は50%以下に規定されているため、減水剤を添加して強度をより高めます。
2:水中不分離性混和剤を使用したコンクリート
水中不分離混和剤を使用したコンクリートは、水中で使用しても分離しにくく、水質を汚しにくい特徴です。
水中コンクリート用に開発され、水溶性高分子の増粘作用によって分離しません。乾燥収縮量が通常のコンクリートより20~30%大きく、凝結時間が5~10時間遅い性質を持ちます。
陸上での打設と異なる環境で使用するため、振動締固め作業を行わない施工を前提としたコンクリートです。
3:特定用途用のコンクリート
基礎などとして施工される場所打ち杭および、地下連続壁のための水中コンクリートです。
掘削箇所での打ち込みは、掘削かごなどを建て込みます。水セメント比は55%以下、水中セメント量は350kg/m³以上です。水中施工時の強度を気中施工時の0.8倍とみなしますが、安定液中施工時の強度は0.7倍とします。
水中の場所打ち杭は、橋脚など水中では土台、気中では橋を支える役割です。
水中コンクリートの用途2選
水中コンクリートの主な用途は、底盤と設置ケーソン内部の2つです。
地上で行う基礎コンクリート打設は、底盤は建物全体の荷重を支える役割を担います。一般的に底盤と立ち上がりを分けた2度打ちです。
水中の場合、基礎に設置ケーソンを利用して底盤コンクリートを使用しない工法も選択できます。
1:底盤コンクリート
底盤コンクリートは、海底に構造物を構築する際の基礎です。
海上に橋を建設する際、水深が浅い現場では、橋脚などを底盤コンクリートで施工します。施工場所を鋼管矢板で締め切って排水し、水中不分離混和剤を使用した水中コンクリートを打設します。
底盤コンクリートは海底面の止水が目的です。矢板で海水がない状態を保持したまま橋脚など構造物を建設します。
2:設置ケーソン内部のコンクリート
ケーソンは橋脚や防波堤などを支えるための基礎構造物で、内部にコンクリートを打設して、海底に設置します。
ケーソンの建造は専用のケーソンドックで行います。設置場所に曳航(えいこう)した後、海水を二重壁内に満たして沈め、水中コンクリートを打設して、水とコンクリートを置き換えて完了です。
不分離混和剤を使用したコンクリートは、1区画ごとにレイタンス処理を行いながら打設します。
水中コンクリートの主な施工方法2選
水中コンクリートはトレミー工法とコンクリートポンプ工法が主な施工方法です。
トレミー工法は、水中に突き立てたトレミー管を通してコンクリートを流し込みます。コンクリートポンプ工法は、直接圧送して打設する方法です。
この他に、プレパックドコンクリート工法や底開き箱を利用した工法などがあります。プレパックドコンクリート工法は、ケーソンや型枠内に粗骨材を投入しモルタルを流し込みます。
1:トレミー工法
トレミー工法とは、上部にホッパーを設置した直径25~30cmのトレミー鋼管を使用する打設方法です。
留意点は、トレミー管の下側をコンクリート中に30cm以上埋め込む状態の維持です。コンクリートと海水の接触を防止し、コンクリートの品質低下を避けます。
コンクリートの打上りに合わせてトレミー管を引き上げます。1本のトレミー管で打ち込める面積は30m²です。小規模向けの工法で、熟練を要します。
2:コンクリートポンプ工法
コンクリートポンプ工法とは、海上または陸上のコンクリートポンプでコンクリートを直接圧送して、水と置き換えながら打設する工法です。
配管内が負圧になりやすいため、周囲の水の浸透を警戒し、配管は水密性の高いものを使用して、コンクリートの品質を保持します。
また、広範囲への施工が可能なため、多くの現場で採用される工法です。設置ケーソン工法など大量の水中コンクリートの打設にも適しています。
水中コンクリート施工時の注意
水中コンクリート施工時はコンクリートと水の接触を避け、工法の違いに注意します。
水中コンクリートの打設は、コンクリートの品質低下と海洋汚染を防ぐために水と接触させません。水の流動を防いで、静水中に打ち込みます。
使用するコンクリートの特性を理解し、工法の違いによって異なる施工方法を把握しましょう。構造物の品質を保持するためのレイタンス処理やスライム除去など、適切なタイミングで行います。
水との接触を避ける
水柱コンクリートは打設中に水との接触を避け、水中に落下させないように注意します。
打設の際は、打設面を水平に保つようにしましょう。所定の高さまで連続して打設し、水との接触機会を低減させます。打設中のコンクリートのかき交ぜ、及び打設後の締固めは行いません。
コンクリート打設による環境への配慮、潜水作業員の負担軽減もあわせて行います。
水の流動を防ぐことも重要
コンクリートが硬化するまでは、止水設備の設置などにより水の流れを防ぎます。
水中コンクリートは静水中の打設が基本です。鋼管矢板などを使用して、止水を行って硬化するまで水との接触をなるべく少なくします。また、水の流れを防げない場合は、流速0.05m/sまで許容されます。
不分離混和剤を使用したコンクリートは硬化時間が多く必要です。適切な水の流動対策を行って、コンクリートの品質保持に努めます。
工法による挿入の深さの違いを意識する
工法が異なると、コンクリート面に挿し込む管の深さも異なります。
トレミー工法の場合、管は2m以上の挿し込みを維持し、コンクリートポンプ工法は、30~50cmを確保しなければなりません。
打設するコンクリートは、細骨材率を40~50%に高め、スランプは13~18cmにします。分離を防いで流動性を高める目的ですが、工法やコンクリートの種類によって規格や配合が異なるため細心の注意を払いましょう。
水中コンクリートについて学ぼう
水中コンクリートは水中に打設するコンクリートで、特殊な混和剤の使用や工法など陸上のコンクリート打設と異なります。
橋脚や港湾設備などの底盤や設置ケーソン内部に打ち込みます。トレミー工法とコンクリートポンプ工法が主な工法です。水とコンクリートが接触しないように注意し、使用するコンクリートの種類によって、コンクリートの品質も異なります。
水中コンクリートについて知識を深めましょう。
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