東京オリンピック後の建設業界の動向9つ|オリンピック後の建築業界の課題3つ
目次
建設業界の現状
建設業界において、常に忙しいという特殊な状況がここ10年ほど続いています。
2011年に発生した東日本大震災の復興関連の仕事は、もうすぐ発生から10年になる今も進行中です。
東京オリンピック開催が決まってから延期になっている今も、そして今後の動向としても建設の仕事の需要は高いまま、と予想されます。
東京オリンピック需要のおかげで、人手不足による人件費の高騰などの理由から工事費が高くなり、東京オリンピック後に工事を延期する業者も多く、常に仕事が溜まっているのです。
東京オリンピックにおける特需とは
オリンピックという世界的に注目される大会が日本の首都、東京で行われることで生まれる大きな需要のことを、東京オリンピックにおける特需といいます。
具体的には、道路、鉄道、空港となどの交通インフラの設備や、観光客の増加が、経済の今後の動向に、大きな影響を与えることになります。
建設業界は東京オリンピックの特需による影響が大きい業界で、前述の交通インフラに加えて、選手村や競技場の建設など、都心で建設ラッシュが起きています。
建設業界の今後の動向が心配される理由
東京オリンピックなどによる、このところの需要の高まりのため、建築業界には慢性的な人材不足が起きています。
それに加えて、国は働き方改革を行っていて、その影響で時間外労働が制限され、一向に問題は解決する様子がありません。
今後の動向として、工事の担い手である労働者が確保できない状況が続けば、需要があるのに供給が追いつかず、必要な工事が行えなくなってしまいます。
過酷といわれる建設業界の労働環境を改善し、若い人が建設業界で従事したいと思えるようなオペレーションの改善など今後の動向を変えていくことが求められています。
東京オリンピック後も建築業界の仕事は少なくない
建築業界では、オリンピックが終了したら仕事がなくなるのではないかという声をよく耳にしますが、どうやらその心配は杞憂に終わりそうです。というのも、オリンピック後も実に豊富な仕事があることが予想されるからです。
最も大きな事業として知られるのがリニア新幹線関連工事です。2027年の開業を予定していますが、広範囲にわたる大きな工事となるため、大きな需要が期待できます。
そのほか、老朽化したインフラ設備を刷新する公共事業も多くなる見込みで、震災への不安からビルや住宅の耐震工事への需要も高まることが予想されます。
また、現在はオリンピック需要があるおかげで工事費が高くなる傾向があり、工事をオリンピック後に延期しようとする施主も多く、仕事がたまっている状態のようです。
コロナ禍による建設業界の影響
建設業界において、工事は、発注者からの請負契約で業務が行われるので、建設業者側の判断で工事を中断することはありません。
しかし、海外との物資の行き来が滞って資材が届かない、公共事業自体が中止になる、発注者からのキャンセルが出るなどにより工事ができなくなり、業務が減ってしまうことは建設業界でも起きています。
ただ、もともとの業務量が多いので、外国人の労働者が新たに来られなくなるなどの影響もあり、人手不足は変わらず続いており、改善されていない状況です。
建設業界で請け負った仕事は、現場で管理しなくてはならないので、密を避けながら納期に遅れないように作業を進めていくいことは、今後の動向として当分続いていきます。
建設業界の今後の動向7つ
建設業界の東京オリンピック開催予定期間後の今後の動向は、どのようになっていくのでしょうか。需要は相変わらず高いままなのでしょうか。
建設業界の今後の動向として決まっているもの7つを順にみていくことで、建設業界の今後の状況につい考えていきましょう。
1:インフラ設備の老朽化に伴う公共工事の増加
高度成長期に建設された、高速道路や橋などのインフラは老朽化しているため、維持や修繕などの老朽化対策に2019年度から公共事業費が投じられるようになっています。
今後の動向として、この先20年もの間、築年数が50年以上になるインフラはさらに増えるので、長期的に建設需要が見込まれます。
また、国土交通省はインフラに不具合が起きる前に計画的なメンテナンスを行い、予防に力を入れています。
新しい技術を積極的に取り入れる動きもあるので、建設業界の今後の動向にとって重要な位置を占めていくでしょう。
2:大型マンションや集合住宅の大規模修繕工事
大型マンションや集合住宅では、その価値を保っていくために、築10年・築20年・30年のタイミングで大規模改修工事を行うことを当初から計画し、住民から毎月修繕積立金をもらっています。
しかし、東京オリンピックによる建設需要の増加に伴い改修工事の費用も高騰したため、東京オリンピック後に工事を延期にしている大型マンションや集合住宅が数多くあります。
東京オリンピック自体が新型コロナの拡大の影響で一年延期されたため、先延ばしにしている工事が、東京オリンピック以降にいよいよ行われます。
また今後の動向として、大規模修繕工事をオリンピック後に延期にするマンション管理組合が増加したことで、工事会社が、受注をうけるために、相場より安い金額で引き受ける傾向が出てきたことで、大規模修繕工事の費用が落ち着きつつあるので、修繕工事の受注は増加の傾向がみられるでしょう。
3:オフィスビルや大型マンションの耐震工事
大きな地震が毎年のように起き、東日本大震災の余震も未だに続いている日本では、オフィスビルや大型マンションの耐震工事も、建設業界の今後の動向に関わってきます。
旧建築基準法をベースに建築されたビルやマンションには、耐震性に不安のあるものが多く、そのような建物は地震が起きてしまうと被害を受ける度合いが高くなってしまうので、今後の動向を見て、早めに対処することが必要です。
耐震工事を受ける建物は建築士などの専門家により、耐震診断調査を行って問題が判明した場合は、壁を増強する、建物の骨格となるフレーム部分に補強を入れるなどの補強工事が必要となります。
4:リニア新幹線の開通に関する工事
東京オリンピック前から話題を集めていた、リニア新幹線が2027年に開業を控えています。
リニア新幹線に関する工事は、本体の工事だけでなく、リニアの停車する品川駅や名古屋駅といった大きなターミナル駅の再開発工事などに相応の需要が見込まれます
また、新しく開業するリニア新幹線発駅周辺では、駅周辺の開発にプラスして、道路整備などの工事の需要も発生することが挙げられます。
リニア新幹線開通は、東京オリンピック後の建設業界の今後の動向にとって、大きな存在となります。
5:非住宅の老朽化に伴う改修工事
改修工事が必要なのは、住宅に限らず、例えば大切なものの一つとして、公立の小中学校が挙げられます。
公立小中学校施設は、第2次ベビーブームに合わせて多く建設されたため、建築後25年以上経過した建物が全体の約7割にもおよび、校舎等の老朽化が進んでいます。
建物部材が25年も経つと、安全面や機能面での不具合を引き起こし、子どもたちの危険につながりかねません。
また、地震大国の日本において、公立小中学校の約9割が地域の避難所となっており、安全や機能に不安のある建物に多くの人が避難することはとても危険なので、早急に学校施設の老朽化対策に取り組む必要があります。
公立の小中学校は全国に数多く、東京オリンピック後の建設業界の今後の動向に住宅以外の改修工事も大きく関わってきます。
6:IRリゾートに関する工事
IRリゾート、すなわちIntegrated Resorts、日本語ではカジノを含む統合型リゾートの開発が日本でも始まるという話題が出て、数年経ちますが、東京オリンピック後は本格的にその工事が始まり、建設業界の今後の動向に大きな影響を与えることになります。
IRリゾートはカジノだけでなく、ホテル、劇場、パーク、ミュージアム、などを一つの区域に含む統合施設で、カジノの面積が狭くても収益率が高いため、他の施設はサービスの行き届いた集客力のあるものにするなど、今までとは違ったものになります。
建設業界でも目新しい、注目を集める工事になるでしょう。
7:大阪万博に関する新規工事
2025年に開催予定の大阪万博では、夢洲地区の広大な敷地にパビリオンが建設されるので、建設業界にとって大きな需要となります。
それに併せ、大阪の地下鉄中央線に新駅の建設が計画されているので、地下越や駅そのものの建設、周辺地区の開発も建設業界に発注されます。
万博は世界中から多くの人と注目を集めるものの、一時的な需要なのではと思われがちです。万博で盛り上がった後の落ち込みを回避するため、総合型リゾートの開発も計画されており、長期間にわたって建設業界の今後の動向に影響を与えます。
東京オリンピック後の建築業界の課題3つ
ただし、課題がないわけではありません。折からの高需要のため、建築業界には慢性的な人材不足が起きています。
国が進める働き方改革の影響で時間外労働が制限される傾向にあり、一向に問題は解決する様子がありません。このままの担い手が確保できない状況が続けば、せっかく需要があっても供給が追いつきません。
過酷といわれる業界の労働環境を改善し、とくに若い人が従事したいと思えるよう、一刻も早いオペレーションの改善が求められています。
1:建設業界の高齢化
建築業界は、高度経済成長期の日本では第一線の業界であり、商業施設や道路など多くの建設需要があり、現場の労働者や技術者が多くいました。
それが、バブルの崩壊により、高度経済成長期以降初めて、国内の建設需要は右肩下がりになり、その時期に人員削減が行われました。
少子高齢化の問題も、建築業界の人手不足に直結しており、建設業界の平均年齢は年を追うごとに上昇してしまっています。
建設業界の労働者の平均年齢が上がっていくと、今の労働者が引退を迎えるころには、建設業界は今より深刻な人手不足、それも経験を積んだ人がいない状況となってしまいます。
建設業界の平均年齢が上昇していく要因には、仕事内容がきついわりに給料が低く、労働時間が長いため、若者に敬遠されているということがあります。
2:若手労働力の不足
建設業界の今後の動向として大きな問題である人手不足は、建設業界に興味を持つ若者が少なくなってきていることが大きな原因の一つです
20~24歳の建設業界入職者数が20年前に比べて、なんと7割も減少しています。
興味を持つ若者が少なくなった理由は、建設業界に仕事内容がきつい・職場が汚い・そして危険を伴うという、いわゆる「3K」の印象が強いからでしょう。
また現場では、危険を伴うこともあり、上司からきつい言葉をかけられることも多いため、怒られることが少ない環境で育った若者が定着せず、離職率が高いことも若者の人手不足の原因です。
3:職場環境の整備
建設現場では、工事が天候に左右されるため、悪天候だと途中で作業を中断せざるをえないことが度々ある一方で、工期に余裕がないことも多く、遅れた分の作業を取り戻すため、長時間労働になってしまいます。
この過酷なスケジュールを避けるために、適切な工期を設定する必要があるとして、国土交通省は「働き方改革加速化プログラム」を策定し、適切な工期設定を推進するようになりました。
その影響もあり、公共事業では余裕のある工期設定がされるようになってきました。東京オリンピックの後は、この適切な工期設定があらゆるところで推進されるべきでしょう。
また、人の負担を減らすために、上向きの溶接や石膏ボード張り、移動する吊り下げ型の足場などができる、画期的な機械の導入が始まっています。
体力的、時間的な改善につながる職場環境の整備が進み始めています。
東京オリンピック後の建設業界の今後の動向に注目しよう
建築業界ではオリンピック後も大規模な事業がいくつも予定されており、当面は仕事が豊富にあることが予想されます。高い需要に応えて安定した供給を行うためには、人材不足を解消する労働環境の抜本的な改革が急務であるといえるでしょう。
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